イスラムの歴史 (2019-8-31)

(2019-8-31)　契約の箱はどこへ？

　この略奪とそれに続く破壊の混乱の中で、もう一つ所在不明になった物がある。ソロモンが安置した、モーセ由来の契約の箱である（(2008- 4-23)　契約の箱、(2011-10-22)　契約の箱の設置　part 1参照）。聖書の列王記や歴代誌の中でも全く触れられない。イスラエルの民には価値のあるものでも、バビロニア軍にとってはただの箱にしか見えなかったことであろう。

　(2008- 4-23)　契約の箱で私は「新バビロニア帝国によってエルサレムが滅ぼされた際、この箱は行方不明になる。」と書いたが、ここまでいろいろと話を書いてきて、必ずしも契約の箱が無くなったのはエルサレム滅亡の時だとは限らないのではないか、と思うようになってきた。なぜなら、エルサレムの神殿は、紀元前587年の破滅よりも先に、何度か略奪を受けているからである。

　例えば(2012- 2-25)　エジプト軍の来襲　part 1でエジプト軍がエルサレムに攻め上ってきた際、神殿は略奪されている。また、(2016- 6-18)　ユダの王アマツヤ　part 3で記したように、北イスラエル軍がエルサレムに進軍した際にも、神殿の祭具等が奪われている。これらの略奪の際に、契約の箱も一緒に奪われていないとは限らない。

　実際、ソロモンが契約の箱を神殿に設置して以降、列王記や歴代誌の中で契約の箱のことは一箇所を除き、一切触れられなくなる。唯一登場するのが、歴代誌下第３５章第３節である。そのときの様子は(2018- 3-24)　ユダの王ヨシヤ　part 3で書いたが、ヨシヤ王はこう述べている。「イスラエルの王ダビデの子ソロモンが建てた神殿に、聖なる箱を納めよ。あなたたちはもはやそれを担う必要がない。」

　ずっと神殿に安置されていたのなら、わざわざもう一度箱を納める必要は無い。直接の言及は無いが、この時点で契約の箱はすでに無かったのではないか。であればこそ、もう一度箱を作り直して設置したのではないだろうか。

　そしてエルサレムの神殿は、遂に新バビロニア軍による略奪に遭い、さらに破壊される。このときまで契約の箱はあったのか。新バビロニア軍に持ち去られたのか、それとも炎上の際に一緒に燃えてしまったのか・・・。いずれにせよ、箱の行方は謎のままである。

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