イスラムの歴史 (2015-12-5)

(2015-12-5)　アタルヤ、ダビデの末裔の根絶やしを命ずる　part 1

　北王国の話はいったんここで置いて、南王国に移る。南王国の王、アハズヤは北イスラエルの王ヨラムと共に、イエフの謀反に遭って戦死した（(2015- 3- 7)　イエフの謀叛　part 5参照）。そうして南のユダ国には、アハズヤの母、アタルヤが残されたのである（アタルヤについては(2014-10- 4)　ユダの王ヨラム参照）。夫ヨラムはすでに亡く、南ユダの王である息子アハズヤは戦死。北イスラエル王であった兄のヨラムも戦死。親族もイエフによって皆殺しにされた彼女の胸中はいかばかりであっただろうか。

　ここで彼女は、南王国の乗っ取りを画策した。ダビデの血を引く者を皆殺しにさせたのである。北イスラエル王国の血を引く彼女ならではの所業であった。政権が代われば、前政権の関係者を根絶やしにするのは、北イスラエル王国では頻繁に行われていたからである。それは、新たな王権を握った者にとって、前政権の血を引く者が担がれて反乱が起きることを防ぐ知恵でもあった。　－　国家が安定しないという副作用もあるのだが。

　理不尽な命令ではあっても、アタルヤは何と言っても王の母である。命令は忠実に実行され、ダビデ家の男は一人残らず殺された　－　かに見えた。だが、ただ一人、この虐殺を生き延びた者がいた。まだ赤子だったヨアシュである。アハズヤの血を引くこの赤子は、同じくアハズヤの血を引く姉、ヨシェバの機転で生き延びた。ヨシェバは集められた王子たちが殺される前に、ヨアシュを抱き上げると、その乳母に預けた。そうして彼女は乳母に言った。「寝具の部屋に隠れてください。ことが収まったら、この子を連れて私の夫を訪ねてください。」　ヨシェバの夫は祭司ヨヤダであった。

　こうして、王子たちが皆殺しにされた後、乳母はヨアシュを連れて脱出した。実は聖書にはヨシェバのその後が触れられていない。だが、状況からすれば、殺されたのではないかと思う。彼女もまた、ダビデの血を引く者だったからである。だが繰り返すが、聖書にはヨシェバのその後については何も触れられていないので、何があったか正確なところはわからない。

　さて、ダビデの血を引く唯一の生き残り、ヨアシュを抱いた乳母が訪ねてきたのを見て、ヨヤダは驚いた。だが事情を聞いて、彼は神殿にヨアシュをかくまうことにした。神殿では多くの宗教関係者などが生活している。その中で見知らぬ赤子が一人育てられていても、それほど目立たなかった。仲間には適当な言い訳をして、ヨヤダはヨアシュを育て続けた。そうして６年の時が過ぎた。

（次回に続く）

参考表　この時期の南北朝の王

前の記事　　　次の記事