イスラムの歴史 (2015-12-5)

(2016-1-2)　アタルヤ、ダビデの末裔の根絶やしを命ずる　part 2

（前回からの続き）

　南ユダ国は、今やアタルヤのものとなっていた。そんなある日、ヨヤダはカリ人と近衛兵からなる百人隊の隊長たちを神殿に密かに集めた。彼らの前に、７歳になる男の子が連れてこられた。ヨアシュである。ヨヤダは隊長たちと契約を結んだ。ここで初めて、ヨヤダは彼がダビデ王の血を引く者であることを明かした。隊長たちの間に静かなどよめきが起こる。ヨヤダは隊長たちに言った。「あなたたちのうち、安息日が出番に当たる者の３分の１は王宮の警備に就き、ほかの３分の１はスルの門に詰め、残る３分の１は近衛兵の背後の門に詰めよ。こうしてあなたたちは交代で王宮の警備に当たれ。おのおの武器を手にして、王の周囲を固めなければならない。隊列を侵す者は殺されなければならない。王が出るときも、入るときも、王と共に行動せよ。」

　百人隊の隊長たちは、すべて祭司ヨヤダが命じたとおりに行動した。それぞれ、部下を引き連れて再びヨヤダのもとに集結した。ここでヨヤダは、神殿に納められていたダビデ王の槍と小盾を百人隊の隊長たちに渡した。南ユダ王国の父祖ダビデの武具を与えられた隊長たちの士気は、いやが上にも高まった。なお、この「ダビデ王の槍と小盾」が具体的にどういう物だったかはわからないが、神具だったのではないかと思う。兵たちはおのおの武器を手にすると、祭壇と神殿の周囲を固めた。

　兵士たちの興奮は、ヨアシュが現れると最高潮に達した。ヨヤダは王子を神殿に連れてくると、王子に冠をかぶせ、掟の書を渡した。次いで、ヨヤダたちはヨアシュに油を注いだ。言うまでもなく、ヨアシュを王位に就ける行為である。兵士や周囲にいた人々は拍手をすると、誰ともなく叫び始めた。「王様、万歳！」　「王様、万歳！」

　この騒ぎを聞きつけたアタルヤは、侍従を連れて神殿に行った。そこは兵士で満ち、人々があつまり、喜び祝ってラッパを吹き鳴らしていた。見ると、柱の傍らに王が立ち、その傍らには将軍たちと吹奏隊が立ち並んでいる。アタルヤは衣を裂いて、「謀反、謀反だわ！」と叫んだ。

　アタルヤに気づいた祭司ヨヤダは、百人隊の隊長たちに命じた。「彼女を群衆の中から外に出せ。もしも彼女についていく者があるならば、その者は剣にかけて殺せ。彼女を主の神殿の中で殺してはならない。」　彼らはアタルヤを捕らえると、馬の出入り口を通って王宮に連れて行った。そうしてそこで、兵士たちはアタルヤを殺した。

　ヨヤダは、神と民の間に契約を結び、王と民の間でも契約を結んだ。国の民は皆、バアルの神殿に行き、神殿と祭壇を破壊し、像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。祭司ヨヤダは神殿の監督を定め、更に百人隊の隊長たちや国の民全員を率いて王を神殿から連れ出し、王宮へ導いて王座につけた。

　こうして国の民は皆、喜び祝った。アタルヤが殺されてから後、エルサレムの町は平穏だった。

（列王記下第１１章、歴代誌下第２２章第１０節～第２３章より）

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