イスラムの歴史 (2007-6-18)

(2007-6-18)　アブラハム　part 3

　アブラハムの話を続ける前に、ちょっと寄り道を。実は旧約聖書の中には、(2007- 6-14)　アブラハム　part 1で紹介した話の別バージョンも載っている。似た話が２回、別々の章で登場するのである。

　先に(2007- 6-14)　アブラハム　part 1で紹介した話は、創世記第１２章に記されていて、Ｊ文書（南王国）版の物語である。一方、今日紹介する話はＥ文書（北王国版）、創世記第２０章に記されていて話の細部が微妙に違う。前に書いたことの繰り返しになるが、この予備知識無しに旧約聖書をただ読んでいくと、「似たような話がさっきも出てきたのに、なんでまたこんな話が？　しかもさっきと場所・人物が違う」と、混乱することになる。
（Ｊ文書、Ｅ文書については(2007- 6- 4)　聖書の成り立ち　part 4参照）。

　それでは、Ｅ文書版の物語をどうぞ。

　アブラハムはネゲブ地方に住んでいた。あるとき、アブラハムは妻サラを連れてペリシテの町、ゲラルに滞在した。アブラハムはサラのことを自分の妹と言っていたので、ゲラルの王アビメレクは使いをやってサラを召し入れた（Ｅ文書版では理由は明示されていないが、Ｊ文書版の物語から推察するに、サラが美人だったので噂を王が聞きつけたのだろう）。自分の宮中に入れて、彼女と寝るつもりだったのである。王アビメレクは、その日はサラには手を付けずに寝た。するとその夜、夢の中に神が現れて言った。「お前は今日召し入れた女のゆえに死ぬ。その女は、夫のある身だ。」

　アビメレクは、まだサラには手を付けていなかったので、神に言った。「主よ、あなたは正しい者でも殺されるのですか。彼女のことを妹だと言ったのは、彼（アブラハム）ではないですか。また彼女（サラ）も『あの人は私の兄です』と言ったからこそ、私はこのことをしたのです。」

　神が答えて言った。「わたしも、あなたがやましい考えをしたのではないことを知っている。だからこそ、私はあなたが罪を犯すことのないように、彼女に触れさせなかったのだ。直ちに、あの人の妻を返しなさい。彼は預言者だから、あなたのために祈り、命を救ってくれるだろう。しかしもし彼女を返さない場合は、あなたもあなたの家来も皆、必ず死ぬことを覚悟しなければならない。」

　夢の中で神のこの言葉を聞いたアビメレクは、震え上がった。

（次回に続く）

参考地図1-2-1：古代イスラエル

（(2007- 6-14)の図を再掲。注意事項についてはその記事を参照してください）

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