|
(2011-12-31) 敵対する者たち／ソロモンの死 part 2 （前回からの続き） そうして３つめがソロモン政権にとっては深刻な影響があったのだが、エフライム族の者でネバトの子ヤロブアムという男である。その母の名はツェルアといい、寡婦であった。 ソロモンがミロを築き、父ダビデの町の破れをふさいでいたときの話である（ミロの砦の建設については(2011-11-12) ソロモンの諸事業参照）。ヤロブアムは有能な人物だったので、ソロモンはこの若者の働きぶりを見て、ヨセフ族の労役全体の監督に任命した。 そんなある日のこと。ヤロブアムがエルサレムを出て歩いていると、シロの預言者アヒヤが道を歩くヤロブアムを見つけた。野には彼ら二人の他に、誰もいなかった。預言者アヒヤはヤロブアムを見ると、近づいていった。そうして預言者アヒヤは着ていた真新しい外とうを手に取ると、１２切れに引き裂いてヤロブアムに差し出しながら言った。 「１０切れを取るがよい。イスラエルの神、主はこう言われる。『私はソロモンの手から王国を裂いて取り上げ、１０の部族をあなたに与える。ただ１部族だけは、我がしもべダビデのゆえに、また私が全部族の中から選んだ都エルサレムのゆえにソロモンのものとする。私がこうするのは、彼が私を捨て、シドン人の女神アシュトレト、モアブの神ケモシュ、アンモン人の神ミルコムを伏し拝み、私の道を歩まず、私の目にかなう正しいことを行わず、父ダビデのようには掟と法を守らなかったからである。しかし、私は彼の手から王国全部を奪いはしない。私の戒めと掟を守った、私の選んだしもべダビデのゆえに、彼をその生涯にわたって君主としておく。私は彼の息子の手から王権を取り上げ、それを１０部族と共にあなたに与える。彼の息子には１部族を与え、私の名を置くために私が選んだ都エルサレムで、我がしもべダビデのともし火が私の前に絶えず燃え続けるようにする。 だが、私はあなたを選ぶ。自分の望みどおりに支配し、イスラエルの王となれ。あなたが私の戒めにことごとく聞き従い、私の道を歩み、私の目にかなう正しいことを行い、我がしもべダビデと同じように掟と戒めを守るなら、私はあなたと共におり、ダビデのために家を建てたように、あなたのためにも堅固な家を建て、イスラエルをあなたのものとする。こうして私はダビデの子孫を苦しめる。しかし、いつまでもというわけではない。』」 ダビデやソロモンのように油を注がれたわけではなかったが、イスラエル１２部族のうちの１０部族の王になれ、と言われたのである。大それた預言に、ヤロブアムは戦慄した。ヤロブアムは別に王族でも何でもなく、人の上に立つなど夢にも思わなかった。 「まさか。」 ヤロブアムは恐れて言った。「そのようなことは、私には無理です。」 だが、預言者アヒヤは１０切れの外とうの切れ端をヤロブアムに手渡すと、神の教えを守るように言い、ヤロブアムに背を向けて歩み去っていった。ヤロブアムは茫然として１０切れの切れ端を手にして立ちつくしていたが、やがて自分の家に戻った。 そうして日が経ち、ヤロブアムがこの出来事を親しい人間に話したが、それがやがて徐々に広まり、最終的にはソロモンの耳にまで届いた。政権に対する危機の芽を感じたソロモンは、ヤロブアムを捕らえて殺そうとしたが、身の危険を察知したヤロブアムは直ちに逃げた − それも、国外に。ヤロブアムはエジプトを目指して逃げ、エジプトの王シェションク１世（第２２王朝の創始者。聖書ではシシャクと表現されている）のもとに行き、そうしてソロモンが死ぬまでエジプトを出ようとはしなかった。
ソロモンの他の事績、彼の行ったすべてのことは『ソロモンの事績の書』という書物に記載されていたらしい。ソロモンの話が記載されている列王記が著作された紀元前６世紀頃には存在したかもしれないが、今は失われた資料となっている。 ソロモンはイスラエルを４０年間治めた後に没し、ダビデの町に葬られた。 （列王記上第１１章第１４節〜第４３節より） 参考地図1-6-31：敵対する者たち
|
