イスラムの歴史 (2011-12-17)

(2011-12-17)　ソロモンの背信

　ソロモン王は、ファラオの娘のほかにもモアブ人、アンモン人、エドム人、シドン人、ヘト人など多くの外国の女を愛した。これらの諸国の民については、神がかつてイスラエルの人々に、「彼らの中に入っていってはならない。彼らをあなたたちの中に入れてはならない。彼らは必ずあなたたちの心を迷わせ、彼らの神々に向かわせる」と語ったが、ソロモンはそのような外国の女性を愛してそのとりことなった（他の民の神を信仰した際の事例としては、だいぶ前の話になるが(2008- 6-13)　ペオルにおけるイスラエルを参照）。

　ソロモンには妻たち、すなわち７００人の王妃と３００人の側室がいた、とされる。誇張はあるだろうが、とにかく多くの妻たちがいたのであろう。この妻たちが、ソロモンの心を迷わせた。ソロモンが老境に入ったとき、彼女たちは王の心を迷わせ、他の神々に向かわせた。こうしてソロモンはダビデとは異なり、自分の神とは一つではなかった　－　と、列王記の著者はソロモン王を糾弾している。

　ソロモンはシドン人の女神アシュトレト、アンモン人の神ミルコムに従った（『新共同訳旧約聖書略解』（木田献一監修、日本キリスト教団出版局、２００１年）p.394によれば、アシュトレトはカナン地方の主神バアルの妻ともされる女神。豊饒祭儀の神としてエルサレムでもヨシヤの改革で一掃されるまで根強く信仰された。ミルコムはアンモン人の主神で、旧約聖書のゼファニヤ書第１章第５節にも登場する）。これだけでも飽きたらず、モアブ人の神ケモシュのために、エルサレムの東の山に聖なる高台を築くことすらした（ケモシュについては、かつて士師エフタがアンモン人の王との開戦直前の外交交渉の際、「あなたは、あなたの神ケモシュが得させてくれたところを得たのだ」という趣旨の発言の中でも登場する。(2009- 4-23)　士師エフタ　part 4参照。この際、アンモンの王に対してモアブの神ケモシュを出しているが、この当時はアンモン人もケモシュを信仰していたのか、それとも士師記の記述が誤っているのかは定かではない。いずれにせよ、列王記上におけるアンモン人の神と、士師エフタの話におけるアンモン人の神は一致していない）。

　さらにソロモンはアンモン人の神モレクのためにも聖なる高台を築いた。また、外国生まれの妻たちすべてのためにも同様に行ったので、ソロモンの妻たちは、自分たちの神々に香をたき、いけにえを捧げた。

　ソロモンの心は迷い、イスラエルの神から離れたので、神はソロモンに対して怒った。神は二度もソロモンに現れ、他の神々に従ってはならないと戒めたが、ソロモンはその戒めを守らなかった。そこで、神はソロモンに告げた。

　「あなたがこのように振る舞い、私があなたに授けた契約と掟を守らなかったゆえに、私はあなたから王国を裂いて取り上げ、あなたの家臣に渡す。あなたが生きている間は父ダビデのゆえにそうしないでおくが、あなたの息子の時代にはその手から王国を裂いて取り上げる。ただし、王国全部を裂いて取り上げることはしない。我がしもべダビデのゆえに、私が選んだ都エルサレムのゆえに、あなたの息子に一つの部族を与える。」

（列王記上第１１章第１節～第１３節より）

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