イスラムの歴史 (2011-8-20)

(2011-8-20)　シムイの最期

　アドニヤ一派の粛正は済んだが、ダビデがソロモンへの遺言で、殺すように託していた人間がもう一人いた。ダビデがエルサレムを逃れる際に呪いの言葉を投げつけ続けたベニヤミン人、シムイである（(2011- 2-14)　ダビデとシムイ参照）。だがシムイはアドニヤやヨアブとは異なり、先の王位継承の争いではソロモンを支持していた。表向き、シムイを罰する理由はない。そこでソロモンは一計を案じた。ソロモンは人を遣わし、シムイを呼んで言った。

　「エルサレムに家を建てて、そこに住むがよい。そこからどこにも出て行ってはならない。もし出て行ってキドロンの川を渡れば、死なねばならないと心得よ。お前の血はお前自身の頭に降りかかるであろう。」

　*　キドロンの川は、エルサレム東側のキドロンの谷にある川を指すと思われる。

　シムイは王に「親切なお言葉です。しもべは我が主君、王の言われるとおりにします。」と答えた。

　シムイはエルサレムに住んで多くの月日を過ごした。しかし、三年目が過ぎて、シムイの二人のしもべが、ガトの王マアカの子アキシュのもとに逃げ去った（ここに登場するアキシュは、(2010- 8-16)　ダビデ、ガトにいるアキシュに身を寄せる　part 1で登場したアキシュと同一人物かもしれない。そうだとすれば、ソロモンの時代には高齢になっていたものと思われる）。

　シムイはろばに鞍を置き、二人のしもべを捜し出すためにガトのアキシュのもとに行った。そうしてシムイは二人のしもべをガトから連れ戻してきた。シムイがエルサレムからガトに出かけて帰ってきたことを知らされたソロモンは、人を遣わせてシムイを呼び、言った。

　「私はお前に主にかけて誓わせ、警告しておいたではないか。『どこであれ出て行けば、その日に死なねばならないと心得よ』と。そのときお前は『親切なお言葉です。私は従います。』と答えた。なぜ主にかけて誓ったこと、また私の授けた戒めを守らなかったのか。」

　エルサレムを出たら命を取るなど、ほとんど言いがかりに近い。だが、続けてソロモンが言ったことの方が主題だったのであろう。

　「お前は私の父ダビデに対して行った全ての悪を知っているはずだ。お前の心はそれを知っている。主がお前の悪の報いをお前自身の頭にもたらしてくださるように。しかし、ソロモン王は祝福され、ダビデの王座はとこしえに主の御前にあって揺らぐことのないように。」

　王は傍らにいたヨヤダの子ベナヤに命じ、ベナヤは前に出てシムイを打ち殺した。

　こうして王国はソロモンの手により、揺るぎないものとなった。

（列王記上第２章第３６節～第４６節より）

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