イスラムの歴史 (2010-9-9)

(2010-9-9)　サウル、口寄せの女を訪れる　part 3

（前回からの続き）

　なぜ女がサウルの正体に気付いたかと言えば、サムエルの霊が女に、目の前にいる男がサウル王であることを教えたのであろう。サウルは顔を地に伏せ、礼をした。女はサムエルの霊に身を任せ、サムエルの霊が語るままにサウルに語って言った。

　『なぜ私を呼び起こし、私を煩わせるのか。』

　サウルは言った。

　「困り果てているのです。ペリシテ人が戦いを仕掛けてきているのに神は私を離れ去り、もはや預言者によっても、夢によってもお答えになりません。あなたをお呼びしたのは、為すべき事を教えていただきたいからなのです。」

　サムエルは言った。

　『なぜ私に尋ねるのか。主があなたを離れ去り、敵となられたのだ。主は、私を通して告げられたことを実行される。あなたの手から王国を引き裂き、あなたの隣人、ダビデにお与えになる。あなたは主の声を聞かず、アマレク人に対する主の憤りの業を遂行しなかったので、主はこの日、あなたに対してこのようにされるのだ。主はあなたのみならず、イスラエルをもペリシテ人の手に渡される。近いうちに、あなたとあなたの子らは私と共にいる。主はイスラエルの軍隊を、ペリシテ人の手に渡されるのだ。』

（アマレク人の件は(2010- 2-15)　アマレク人との戦い／決別　part 1～(2010- 2-25)　アマレク人との戦い／決別　part 4を参照）

　サウルにとってそれは死刑宣告に等しかった。サウルやサウルの子が近々、既に死んだサムエルと一緒になるということは、すなわちサウルやサウルの子が死んで冥界の住人となることを意味していた。

　サウルは衝撃のあまり身を起こしかけたが、すぐに力なく地面に仰向けに倒れた。昨日以来、心労のためにサウルは何も食べていなかったことも理由の１つだった。

　女は我に返るとサウルに近づき、サウルがおびえきっているのを見て言った。

　「はしためはあなたの声に聞き従いました。命を懸けて、あなたが言った言葉に聞き従ったのです。今度は、あなたがはしための声に聞き従ってください。ささやかな食事をあなたに差し上げますから、それを召し上がり、力をつけてお帰りください。」

　だがサウルには、食欲は無かった。しかし家臣もその女も強く勧めたので、サウルは身を起こし、床の上に座った。女の家には肥えた子牛がいたので、女は急いで子牛を屠り、小麦を取って種なしパンを焼いた。サウルと家臣は彼女が用意した食事を取り、その夜のうちにサウルたちは去った。

（サムエル記上第２８章第５節～第２５節より）

←前の記事へ　　　次の記事へ→