イスラムの歴史 (2010-5-3)

(2010-5-3)　ダビデ、逃走する　part 1

　そうしてある日、サウルはついに決意して息子のヨナタンと家臣を集め、ダビデを殺すように命じた。

　だがヨナタンはダビデのことを好いていたので（(2010- 4-15)　ゴリアテ　part 9参照）、その集まりが解散するとすぐに人目を避けてダビデのところへ直行し、ダビデに言った。

　「私の父サウルはあなたを殺そうとねらっている。朝になったら注意して隠れ場にとどまり、見つからないようにしていなさい。あなたのいる野原に私は出て行って父の傍らに立ち、あなたについて父に話してみる。様子を見て、あなたに知らせよう。」

　翌朝。ヨナタンはダビデの隠れている野原に父を誘い、父に話した。

　「王がそのしもべであるダビデのゆえに、罪を犯したりなさいませんように。彼は父上に対して罪を犯していないばかりか、大変お役に立っているのです。彼が自分の命をかけてあのペリシテ人（ゴリアテ）を討ったから、主はイスラエルの全軍に大勝利をお与えになったのです。あなたはそれを見て、喜び祝われたではありませんか。なぜ、罪なき者の血を流し、理由もなくダビデを殺して罪を犯そうとなさるのですか。」

　サウルはヨナタンの言葉を聞いて、自分の行いを悔いて言った。

　「主は生きておられる。彼を殺しはしない。」

　さっそくヨナタンはダビデを呼び、サウルの言葉を告げた後でダビデをサウルのもとに連れていった。

　こうしてダビデはこれまでどおりサウルに仕えることになった。ペリシテ人との戦いは引き続き起こったが、ダビデは兵を率いて出陣し、大打撃を与えた。

　ところがある夜。ダビデがサウルの館で竪琴を奏でていると、またしてもサウルに悪霊がくだった。突然、サウルは槍を手にするとダビデに向けて力一杯その槍を突いたが、ダビデはとっさに避け、すんでのところで槍はむなしく壁に突き刺さった。サウルの顔は狂気に満ちていた。ヨナタンの取りなしをもってしてもサウルの悪意を取り除けない現実を見せつけられたダビデは、もはや体面を取り繕ってその場に残るような余裕が彼には残されていないと考え、一目散にサウルのところから逃げた。

（次回に続く）

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