イスラムの歴史 (2010-10-18)

(2010-10-18)　アブネル、ダビデの側につく　part 2

（前回からの続き）

　ミカルは、かつて先代の王サウルがダビデに妻として与えていたが、ダビデがサウルに命をねらわれてサウルの元から逃れた際、ダビデはミカルを連れて行かずにイスラエルに残し（(2010- 5-27)　ダビデ、祭司アヒメレクを頼る　part 1参照）、ダビデが去ったためにサウルはミカルをパルティという者に与えていた（(2010- 8-12)　ダビデ、ナバルに物資を乞う　part 4）。

　使者がアブネルのところに戻ってダビデの意向を伝えると、アブネルはそれを了解した。ただし、ミカルは新王エシュバアルの姉妹にあたる。そうおいそれとは連れて行けるものではない。何度か密使を交換し、ダビデからミカルをもらい受けることを申し出て、アブネルがそれを実現するように尽力することで取り決めがなされた。

　ダビデは外交の使者を立てて、エシュバアルに正式に申し入れた。すなわち、先代のサウル王の娘でかつてのダビデの妻ミカルを、ダビデに再び妻として呼び戻したい、と伝えたのである。この申し出に、エシュバアルは悩んだ。ダビデの言うことには一応理屈は通っているとはいえ、今はミカルは別の男の妻なのである。一方でイスラエル対ユダの戦いは、徐々にユダの側が優勢になっているのも事実だった。

　「一体、どうしたものだろうか。」

　エシュバアルは家臣にはかった上で、ミカルをダビデに返すことに決めた。エシュバアルは家臣を送り、夫パルティ（サムエル記下第３章ではパルティエルと表記されている）から妻ミカルを取り上げた。夫パルティは泣きながらミカルを追い、バフリム（位置不詳）まで来たが、そこで兵を率いるアブネルに「これ以上来るな。もう去れ。」と警告され、やむなく帰って行った。

　そうして、ダビデにミカルを送る使者に、アブネルが選ばれた。アブネルは密かにイスラエル各地の長老に密使を送って伝えた。

　「あなたがたは、これまでもダビデを王にいただきたいと願っていたはずだ。今こそ、その時だ。主はダビデに、『私はしもべダビデの手によって私の民イスラエルをペリシテ人の手から、また全ての敵の手から救う』と仰せになったのだから。」

　また、アブネルはベニヤミン族（サウル、そしてその息子エシュバアルの出身部族）の人々とも直に議論した。そうして、イスラエルやベニヤミン族にとっても良いこととの確信を胸に、直接ダビデと話すべく、ダビデのいるヘブロンへ向かった。

　アブネルと２０人の部下が、ヘブロンにいるダビデのもとについた。「よく来てくれた。」と言ってダビデはアブネルを迎え、酒宴を催してアブネル一行をもてなした。宴もたけなわの頃、アブネルはダビデに言った。

　「私を遣わし、全イスラエルを王のもとに集めさせてください。あなたは王となられるべきお方です。彼らがあなたと契約を結べば、あなたはお望みのままにこの国を治めることができます。」

　ダビデはアブネルの申し出を受諾し、さっそくアブネルをイスラエル内の世論を味方につけるために送り出した。

（サムエル記下第３章第６節～第２１節より）

参考地図1-6-15：アブネル、ダビデの側につく

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