イスラムの歴史 (2010-5-27)

(2010-5-27)　ダビデ、祭司アヒメレクを頼る　part 1

　そうしてダビデは立ち去り、ヨナタンは町に戻った。ダビデは途方に暮れた。一体、これからどうすればいいだろう？

　ダビデは、妻ミカルを置いて行くことにした　－　これからどんな運命が待っているかわからない。過酷な逃亡生活に、妻を連れて行くことを恐れた。また、連絡を取ることでミカルの父サウルにどのように情報が伝わるか、わからない。

　さしあたり、ダビデはノブという町を目指した。ノブには、祭司アヒメレクがいる。アヒメレクは祭司エリ（預言者サムエルの師匠）からすれば曾孫にあたる。ペリシテ戦争でエリの息子ピネハスは戦死したが（(2009-11-30)　ペリシテ戦争　part 2参照）、そのピネハスの孫がアヒメレク（ピネハスの子、アヒトブの子がアヒメレク）で、祭司の家系にあるため、アヒメレクもまた祭司だった。

　千人隊長のダビデが誰も部下を伴わずに自分のところを訪ねてきたのを見て、アヒメレクは不安を感じてダビデに言った。

　「なぜ、一人なのですか。供はいないのですか？」

　ダビデは平静を装って言った。

　「王は私にあることを命じて、『お前を遣わす目的、お前に命じることを、誰にも気付かれるな』と言われたのです。従者たちには、ある場所で落ち合うように命じてあります。・・・それよりも何か、パン５個でも手元にありませんか。ほかに何かあるなら、いただけますか。」

　祭司は言った。

　「手元に普通のパンはありません。聖別されたパンならあります。従者が女を遠ざけているなら、差し上げます。」

　ダビデは祭司に答えて言った。

　「いつものことですが、私が出陣するときには女を遠ざけています。従者たちは身を清めています。いつもの遠征でもそうですから、今日はなおさらのこと、身を清めています。」

　聖別されたパンのことについては、聖書のレビ記第２４章第５～９節に記されている。以下、引用しよう。

　あなたは上等の小麦粉を用意し、それぞれ十分の二エファ（管理人補足：約4.6リットル）の分量の輪型のパンを十二個焼く。それを一列に六個ずつ二列に並べ、純金の机の上に置いて主の御前に備える。各列に純粋の香料を添える。それはパンのしるしとして燃やして主にささげる。アロンはイスラエルの人々による供え物として、安息日ごとに主の御前に絶えることなく供える。これは永遠の契約である。このパンはアロンとその子らのものであり、彼らはそれを聖域で食べねばならない。それは神聖なものだからである。燃やして主にささげる物のうちで、これは彼のものである。これは不変の定めである。

　聖別されたパンは、本来はアロンの子孫、すなわちレビ族の者＝祭司しか食べられないものであったが、アヒメレクはこの際、ダビデやその部下が身を清めてさえいればいいだろうと判断した。その日はちょうどパンを供え替える日で、焼きたてのパンに替えて神前から取り下げた、備えのパンしか無かった。それでも、祭司であるアヒメレクが食べる分には不都合が無かったのである。

（次回に続く）

参考地図1-6-7：ダビデの逃走

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