イスラムの歴史 (2010-5-31)

(2010-5-31)　ダビデ、祭司アヒメレクを頼る　part 2

（前回からの続き）

　ちょうどその日、サウルの家臣の一人がアヒメレクの祭壇を訪れてきていた。名をドエクというエドム人で、サウルの牧者の頭であった。ドエクは、アヒメレクのところに来ているのがダビデだと知ると、隠れてアヒメレクとダビデのやりとりを見守った。

　アヒメレクからパンを得ると、ダビデはアヒメレクに聞いた。

　「ここに、あなたの手元に槍か剣はありますか？　王の用件が急なことだったので、自分の剣も武器も取ってくることができなかったのです。」

　アヒメレクは言った。

　「エラの谷であなたがペリシテ人ゴリアテを討ち取った剣なら、エフォドの後ろに布で包んであります。それしか武器と呼べるものはここにはありません。・・・ですが、他ならぬあなたなら、あの剣を持っていっても構いません。」

　奇跡的な勝利を記念して、ダビデがゴリアテを討ち取った剣（(2010- 4-12)　ゴリアテ　part 8参照）がここに収められていたのである。ダビデは喜んで言った。

　「それに勝るものはない。それを貸してはもらえないだろうか。」

　アヒメレクはエフォドの後ろから、布に包まれたその剣を持ってきた。布を取り払って剣を受け取り、次にどこに行くべきか託宣を占ってもらうと、ダビデは礼を言ってアヒメレクのもとを去った。

（サムエル記上第２１章第１～１０節より）

　余談ではあるがこのときのエピソード、この後約一千年後にイエスが安息日論争で持ち出すことになる。

　マタイによる福音書第１２章では、イエスはこう言う。

　「ダビデが自分も供の者たちも空腹だったときに何をしたか、読んだことがないのか。神の家に入り、ただ祭司のほかには、自分も供の者たちも食べてはならない供えのパンを食べたではないか。」

　イエスの話はまた後で取り上げることになるだろうが、いずれにせよ、武器と食べ物を手に入れたダビデは先を急いだ。