イスラムの歴史 (2009-11-30)

(2009-11-30)　ペリシテ戦争　part 2

（前回からの続き）

　ベニヤミン族の男が一人、凶報を知らせるためにシロに向かった。彼の衣は裂け、頭には塵をかぶっていた。

　一方、シロでは祭司エリが城門のそばに席を設けて座り、勝敗の結果を一刻も早く知りたくて道に目を凝らしていた。勝敗以上に彼には神の箱が気がかりだった。モーセが神から授かったとされる由緒ある板を収めた大事な箱である。万が一のことがあってはならない。

　そこへ、町の入り口にベニヤミン族の男が到着した。彼が結果を知らせると、周辺にいた町の人々は悲痛な叫び声を上げた。

　騒ぎに気付いたエリが、「この騒ぎは何だ。」と尋ねると、あのベニヤミン族の男が急いでやって来て報告した。エリはもう非常に年老いていて目は動かず、実際のところは何も見ることができなかった。

　「私は戦場から戻ってきた者です。今日、戦場から落ちのびてきました。」

　落ちのびてきた、という表現がエリを不安にさせた。エリは尋ねた。「わが子よ、状況はどうなのか。」　男は意を決するために息を整えると、震える声で一気に報告した。

　「イスラエル軍はペリシテ軍の前から逃げ去り、兵士の多くが戦死しました。あなたの２人の息子、ホフニとピネハスも戦死。神の箱も奪われました。」

　息子の死以上に、神の箱が奪われたことにエリは衝撃を受けた。

　彼は席から立ち上がった。「なんと。神の箱が・・・・・・神の箱が・・・・・・」　それだけを言うと、エリは気を失い、あおむけに転げ落ちた。驚いて人々がエリを抱え上げると、彼は首の骨を折って死んでいた。

　祭司エリの息子、ピネハスの妻は出産間近の身だったが、箱が奪われたこと、夫の戦死、しゅうとの死を聞くと激しく落胆した。やがて彼女自身の死と引き替えに男の子が生まれたが、彼女はその子にイカボド（栄光は失われた、の意）と名付けた。「栄光はイスラエルを去った。神の箱が奪われた・・・。」そう言うと、彼女も息を引き取った。生き残ったエリの子孫は、ピネハスの幼いもう一人の息子アヒトブと、生まれたばかりのイカボドだけとなってしまった。

（次回に続く）

参考地図1-6-1：預言者サムエル

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