イスラムの歴史 (2010-3-4)

(2010-3-4)　サムエル、ダビデを見いだす　part 2

（前回からの続き）

　ベツレヘムの長老は高名な預言者サムエルの到着を喜びながらも、不安を感じずにはいられなかった。王サウルと預言者サムエルの間の軋轢は、もはや国中で知らぬ者はない。そのサムエルが訪れてきたことは、波乱の予感を彼にもたらした。長老は思わず尋ねた。

　「あなたがここにおいでくださったのは、平和なことのためでしょうか。」

　サムエルは答えた。

　「もちろん、平和なことです。主にいけにえを捧げに来ました。身を清めて、いけにえの会食に一緒に来てください。」

　そうして会食の場を設けつつ、サムエルは何気なくエッサイ一家を招くことを忘れなかった。

　エッサイは、かの預言者サムエルが来ている会食に誘われ、喜び勇んで自分の子どもたちも連れて会食の場に向かった。

　やがて、会食になった。サムエルは歓談しながらも、しばしばエッサイ一家に視線を注いだ。彼の子どもの中に、次なる王の候補がいると神は言うのである。

　サムエルはエッサイの子の一人、長男エリアブに目を留めた。そして彼こそが主の前に油を注がれる者だと思った。しかし神の声がサムエルに聞こえた。「容姿や背の高さに目を向けるな。私は彼を退ける。人間が見るようには見ない。人は目に映ることを見るが、主は心によって見る。」

　サムエルは思わずつぶやいた。「この子ではない。」

　エッサイは青ざめた。「何がいけないのでしょうか。」　サムエルは訳は話さず、言った。「実は、あなたの子のうちの誰か一人を捜すためにやって来たのです。他の子も見せてもらえないでしょうか。」

　エッサイは次男アビナダブを呼んでサムエルに挨拶をさせ、そうして去らせた。サムエルはエッサイに言った。「この者をも主はお選びにならない。」

　エッサイは次に、三男シャンマを引き合わせた。だが、サムエルは言った。「この者をも主はお選びにならない。」

　そうしてエッサイは次々と７人の息子をサムエルに紹介したが、サムエルは首を振り続けた。「違う。この子でもない。」

（次回に続く）