イスラムの歴史 (2010-3-1)

(2010-3-1)　サムエル、ダビデを見いだす　part 1

　そうして失意にあったサムエルにある日、神が語りかけた。

　「いつまであなたはサウルのことを嘆くのか。私は、イスラエルを治める王位から彼を退けた。角に油を満たして出かけなさい。あなたをベツレヘムのエッサイのもとに遣わそう。私はその息子たちの中に、王となるべき者を見いだした。」

　（エッサイについては(2009-10- 5)　ナオミとルツ　part 13を参照）

　サムエルはため息をつきながら答えて言った。

　「どうしてわたしが行けましょうか。サウルが聞けば、きっと私を殺すでしょう。」

　あの日以来サムエルはサウルと決別したが、曲がりなりにもサウルが何もしてこないのは、サムエルもまた何もしないからこそである。もしもサムエルが、サウルに代わる王を立てる動きに出たら、サウルがそれを黙って見ているとはとても思えなかった。

　神は言った。

　「ベツレヘムへは若い雌牛を引いていき、『主にいけにえを捧げるために来ました』と言うのだ。そうしていけにえを捧げるときになったら、エッサイを招きなさい。為すべきことは、その時私が告げる。あなたは、私がそれと告げる者に油を注ぎなさい。」

　そこでサムエルは、動物の角でつくった容器を聖油で満たし（聖油については(2008- 4- 9)　聖油参照）、若い雌牛を引いてベツレヘムを目指して出かけた。出発にあたっては、「主にいけにえを捧げに行く」と周囲に告げた。サウルに疑念を抱かれてはならない。

　そうしてサムエルはやがて、ベツレヘムに到着した。

（次回に続く）