イスラムの歴史 (2008-4-9)

(2008-4-9)　聖油

　さらに余談ながら、このあたりに記されている規定に関連してちょっと雑談を。

　もっと後の時代になるが、古代イスラエルで王が即位する際には、預言者（祭司）から聖なる油を塗られた。サウル、ダビデ、ソロモンなど、歴代の王はこのようにして油を塗られることが、聖なる者＝神から王権を授かった証となったのである。この、聖なる油を受けて聖別された者をヘブライ語でメサイアという。日本語でなじみの表記はメシアであろう。救世主という意味になっているが、もともとは油を塗られた者＝国王を示した。

　後代になってダビデのような者、イスラエルの民に再び平安を取り戻してくれる者という願いが、メサイアという単語に救世主、「待望される者」という意味を加えた。キリスト教ではイエス＝キリストがメサイアと位置づけられている。

　今日の本題は、その聖なる油のことである。実は聖書中に、この油の作り方が記載されている。出エジプト記第３０章第２２～３３節である。

　それによると、材料は以下のとおり。

ミルラ（没薬）の樹脂　500シェケル（約5.7kg）
シナモン　250シェケル（約2.85kg）
匂い菖蒲　250シェケル（約2.85kg）
桂皮　500シェケル（約5.7kg）
オリーブ油　1ヒン（約3.8リットル）

　・・・ということで、聖油のベースはオリーブ油で、それに香りを付けたもののようである。実際に作ってみたわけではないので何とも言えないが、各香料の占める割合が多いように見受ける。度量衡の単位は『聖書 - 新共同訳』（日本聖書教会、１９８７年）をもとにした。

　レシピを見る限りでは、香りのとても強い油だったのではないだろうか。

（出エジプト記第３０章より）

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