イスラムの歴史 (2010-3-8)

(2010-3-8)　サムエル、ダビデを見いだす　part 3

（前回からの続き）

　「もう、ここにいる私の息子は、全員見せました。お目にかなう者がいなく、残念です。」　エッサイは悲しそうに言った。

　だが、サムエルにとってはこれで済まされる話ではなかった。危険を冒してここに来ている。油を注ぐべき者、次なる王にすべき者がいると神が言うからここに来たのである。神がそう言う以上、必ず誰かがいるはずだった。サムエルは食い下がって言った。

　「あなたの息子は、これで全てですか？」

　エッサイは答えた。

　「末の子が残っていますが、今、羊の番をしています。」

　サムエルは頼んで言った。

　「申し訳ないが人をやって、彼を連れてこさせてください。その子がここに来ないうちは、食卓にはつきません。」

　驚いてエッサイは人をやって、その子を連れてこさせることにした。待っている間、サムエルは食事には手を付けないつもりでいたが、それでは座が白けてしまうので、会食を続けることにした。だが正直、その子が来るまではろくに食事が進まなかった。

　やがて、その子がやって来た。彼はまだ幼さを残していたものの、血色が良く、目は美しく、姿も立派であった。すると神の声がサムエルにした。「立って油を注ぎなさい。彼こそが、その人だ。」

　思わずサムエルは立ち上がった。聖油の入った角を手に、ゆっくりとその子　－　名をダビデと言った　－　に近づくと、皆の前で彼に油を注いだ。もはやサムエルには、周りのことなどどうでもよかった。ついに私は次の王を見いだしたのだ。震える手でダビデの両肩に手を置くと、つぶやいた。

　「どうか主が、あなたとともにおられますように。」

（次回に続く）