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(2021-6-19) クセルクセス、ペルシアへ帰る part 1 さて、先にも書いたように、クセルクセスはペルシア陣営の士気を鼓舞するため、サラミス海峡付近のアイガレオス山のふもとで海戦の行方を見守っていた。だが、結果は惨敗。次々と自軍の船が転覆していく様を見守り続けなければならなかった。思うに、クセルクセスはいわゆる「お坊ちゃま」のような性格だったのであろう。偉大な王の息子として生まれ、最初から王族として人生を歩んでいる。物事が順調に進んでいるときはよいが、逆境に立ち向かう精神力は弱かったのかもしれない。陸軍は未だ健在で、まだ充分に戦争を遂行できるこの段階で、クセルクセスは密かに帰国を考え始めたのである。 話は脇にそれるが、クセルクセスのことを「お坊ちゃま」だと思う理由は、次のようなエピソードがあるからである。今回の遠征のため、ペルシアの大軍を率いてヘレスポントス海峡（現在のダーダネルス海峡）を渡らなければならなかった。ここでクセルクセスは、架橋を命じた。橋は、船をつなぎ合わせてその上に板を敷くというものであったのだが、最初に船橋を完成させた際、猛烈な嵐が起きてこの橋が壊されてしまった。それを知ったクセルクセスは激怒し、海に３００の鞭打ちをした上で足かせを投じるよう命じたという。家臣は王命だから仕方なく実行したというが、海を罰したところで何になろうか。 もしかしたらこのエピソードは作り話なのかもしれない。だがいずれにせよ、クセルクセスは密かに帰国を考え始めた。さしあたりクセルクセスは、貨物船をつなぎ合わせて本土とサラミス島を連結する船橋をつくるかのような動きを見せて、ギリシア軍をけん制させた。そうしておいて、マルドニオスと今後の方針を相談した（マルドニオスは(2021- 2- 6) ペルシア戦争 part 2にも登場した。ダレイオスの功臣ゴブリュアスとダレイオスの妹の子。クセルクセスとはいとこの関係にある）。マルドニオスは、今回の遠征を強力に主張した経緯もあり、自分がギリシアに留まって戦争を続行するので、クセルクセスは帰国してもかまわない、という趣旨のことを述べた。 （次回に続く） 参考地図1-10-19：クセルクセス、ペルシアへ帰る
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