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(2020-7-25) 偽王スメルディス part 1 ヘロドトスの『歴史』には、ダレイオスが王になるまでの経緯が記されている。ことの始まりは、カンビュセス存命中に遡る。 エジプトからペルシアへ実弟スメルディスを送りかえしたカンビュセスは、あるとき、夢を見た。それは、ペルシアから使者が来て、スメルディスが玉座に座り、その頭が天に触れていると報告した夢であった。この夢をみたカンビュセスは、スメルディスが自分を殺して王位に就くのではないかと恐れ、自分に忠実な家臣、プレクサスペスをペルシアへ送った。プレクサスペスは、スサへ上り、密かにスメルディスを殺した。 そうして密かに殺されたために、スメルディスは生きていると考えている者が大勢いたが、それにつけ込んだ者がいた。マゴス僧、パティゼイテスである。彼は、カンビュセスが留守の間に王家の面倒を見るように委託した人物の一人であった。彼には一人の弟がいた。その弟は風貌がスメルディスに似ているうえに、名前もスメルディスだったのである。パティゼイテスは弟のスメルディスを玉座に座らせると、四方へ伝令を送り、今後はカンビュセスではなくスメルディスの命に服すべきことを通達させた。 シリアのアグバタナ（位置不詳）に滞在していたカンビュセスはこの伝令の通達を伝え聞き、家臣がスメルディスを殺していなかったのではないかと疑った。そうして、スメルディス（偽物）の伝令を自分の前に連れてこさせ、誰が彼にそのように命じたのかを調べた。すると、伝令は言った。自分はスメルディス様をこの目で見たことはない。今回の命令は、マゴス僧がスメルディス様の命令として伝えたことである、と。 こうして、スメルディスが偽物であることを確信したカンビュセスは、スサに向かうために馬に乗ろうとしたところ、誤って自らの刀で脚を刺し、その傷が原因で命を落とした。死ぬ前にカンビュセスは家臣たちに、プレクサスペスに命じて密かにスメルディスを殺してしまったことを告白し、あのスメルディスは偽物だから必ず王権を取り戻すように命じて、息を引き取った。 カンビュセスの遺言を聞いた家臣たちは、しかし、スメルディスが偽物という話を信じなかった。カンビュセスがペルシア国民をスメルディスに刃向かわせるためについた、悪意ある嘘だと考えたのである。スメルディスを殺した本人、プレクサスペスも殺害を否定した。カンビュセスが死んだ今となっては、キュロスの息子スメルディスを殺したということが明らかになっては、彼の身も安全ではなくなることを恐れ、口をつぐんだのである。こうしてカンビュセスの死後、７か月間は、偽物のスメルディスが王として君臨した。 （次回に続く） 参考地図1-10-3：偽王スメルディス
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