イスラムの歴史 (2011-3-28)

(2011-3-28)　二人の急使　part 3

（前回からの続き）

　王が、「若者アブサロムは無事か」と尋ねると、とっさにアヒアマツは、先にヨアブに言われた『お前が行って知らせるほどの良い知らせではない。』という言葉を思い出して、答えて言った。「ヨアブが王様のしもべと、このしもべを遣わそうとしたとき、大騒ぎが起こっているのを見ましたが、何も知りません。」

　もう一人の男が町に向かっていることを思い出した王は、アヒアマツに「脇に寄って、立っていなさい。」と命じた。アヒアマツは脇に寄り、そこに立った。

　そこへクシュ人が到着した。彼は言った。「主君、王よ、良い知らせをお聞きください。主は今日、あなたに逆らって立った者どもの手からあなたを救ってくださいました。」

　王はクシュ人に「若者アブサロムは無事か。」と尋ねた。クシュ人は答えた。「主君、王の敵、あなたに危害を与えようと逆らって立った者はことごとく、あの若者のようになりますように。」

　すなわちそれは、アブサロムが死んだということを意味した。「下がってよい。」　やっとのことでクシュ人にそう言うと、ダビデはよろめきながら城門の上の部屋に上って行った。アヒアマツがダビデ王を気遣って近寄りかけたが、ダビデはそれを手で制して、独りで城門の脇の階段を上った。

　階段を上りながら、思わず涙があふれ出てくるのを押さえることができず、ダビデはつぶやき続けた。「私の息子アブサロムよ、私の息子よ。私の息子アブサロムよ、私がお前に代わって死ねば良かったのだ。アブサロム、私の息子よ、私の息子よ。」　そうして階段のを上り終え、城門の上の部屋に着くと、ダビデはそこでむせび泣き続けた。

（サムエル記下第１８章第１９節～第１９章第１節より）

←前の記事へ　　　次の記事へ→