イスラムの歴史 (2010-12-30)

(2010-12-30)　アムノン、タマルとアブサロム　part 1

　さて、その後、ある事件がダビデの家を襲う。ことの次第はこうであった。

　ダビデの三男、アブサロム（(2010-11- 1)　ダビデ、イスラエルの王になる／ペリシテ軍襲来／ヘブロンで生まれたダビデの息子参照）にはタマルという美しい妹がいた。一方、アブサロム、タマルの異母兄アムノン（ダビデの長男）はタマルにぞっこんであった。しかしタマルは処女であり、手出しをするなど思いも寄らないことであった。どうにもならない想いに焦がれてアムノンは、病気になりそうな思いであった。

　アムノンにはヨナダブという友人がいた。ヨナダブはダビデの兄弟シムアの息子で、知恵の働く男であった。アムノンやアブサロム、タマルからすれば従兄弟にあたる。ある日、ヨナダブはアムノンを見て驚いた。ヨナダブはアムノンに言った。

　「王子よ、一体どうしたのだ。会うたびに君はやつれている。何があったのだ。訳を聞かせてくれないか。」

　タマルへの愛で気が狂いそうになっていたアムノンは、秘密をヨナダブに打ち明けた。「実は、兄弟アブサロムの妹タマルを愛しているのだ。でも、彼女を愛することは許されていない。」

　イスラエルでは異父姉妹であれ異母姉妹であれ、その裸を見ることはいとうべきこととされていた（レビ記第１８章第９節参照）。だがタマルは美しく、アムノンが恋い焦がれるのはヨナダブには十分理解できた。ヨナダブは友人に”助言”した。

　「仮病を使って床につくんだ。父上が見舞いに来られたら、こう言ったらよい。『妹タマルをよこしてください。何か食べ物を作らせます。私に見えるように、目の前で料理をさせてください。タマルの手から食べたいのです。』とね。」

　アムノンはさっそくその助言に従った。アムノンが病に伏せたと聞いたダビデはアムノンの見舞いに訪れたが、心配するダビデにアムノンは言った。

　「どうか妹のタマルをよこしてください。目の前でレビボット（菓子）を二つ作ってもらい、タマルの手で食べさせてほしいのです。」

　長男アムノンの不調を心配したダビデは早速、使いをやってタマルにアムノンを見舞うように伝えた。タマルが父の命によりアムノンの家を訪ねてみると、確かに彼は床に就いていた。タマルはアムノンに慰めの言葉をかけて、さっそく菓子を作り始めた。粉を取ってこね、アムノンの目の前でレビボットを作って焼き、鍋を取って彼の前に出した。

（次回に続く）

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