イスラムの歴史 (2011-1-4)

(2011-1-4)　アムノン、タマルとアブサロム　part 2

（前回からの続き）

　しかしアムノンはそれをすぐには食べようとせず、そばにいた者を皆、出て行かせた。彼らが皆出て行き、二人きりになると、アムノンはタマルに言った。

　「料理をこちらの部屋に持ってきてくれ。お前の手から食べたい。」

　タマルが、作ったレビボットを持って兄アムノンのいる部屋に入り、彼に食べさせようと近づくと、アムノンはいきなりタマルの手をつかんで言った。「妹よ、おいで。私と寝てくれ。」

　タマルは激しく恐れてアムノンに言った。

　「いけません、兄上。私を辱めないでください。イスラエルでは許されないことです。愚かなことをなさらないでください。私は、このような恥をどこへ持って行けましょう。あなたもイスラエルでは愚か者の一人になってしまいます。どうぞまず王にお話ください。王はあなたに私を与えるのをこばまれないでしょう。」

　だが、アムノンの情熱は彼の理性を超え、アムノンはタマルの言うことを聞こうとせず、力ずくで辱めて彼女と床を共にした。

　ことが終わった。タマルは泣いていた。一方のアムノンは、長年の想いがかない、満ち足りた気持ちでいたが、いつまでもタマルが泣きやまないことに腹を立て始めた。

　（こいつは、俺にまったくなびかない　－　）

　いったん寝てしまうと、アムノンのタマルに対する興味は、達成感と引き替えに急速に失われた。その代わりに憎悪がアムノンの中で鎌首をもたげてくるのを彼は押さえることができなかった。その憎しみは、彼女への先ほどまでの愛よりも激しいものだった。

　（いつまで泣いているのだ）

　かっとなったアムノンはタマルに叫んだ。

　「立て。今すぐ出て行け！」

　泣きながらタマルは言った。

　「いいえ。私を追い出すことは、今なさったことよりも大きな悪です。」

　だがアムノンはタマルの言葉には耳を貸さず、自分に仕える従者を呼んで言った。

　「この女をここから追い出せ。追い出したら、戸に錠を下ろせ。」

　タマルは未婚の王女のしきたりに従って飾り付きの上着を着ていたが、アムノンに仕える従者が彼女を追い出して、彼女の背後で戸に錠を下ろした。タマルは灰を頭にかぶり、まとっていた上着を引き裂き、手を頭に当てて泣き叫びながら歩いて帰った。

（次回に続く）