イスラムの歴史 (2010-8-5)

(2010-8-5)　ダビデ、ナバルに物資を乞う　part 2

（前回からの続き）

　６００人のダビデの部下は、剣を装備した。ダビデもまた、剣を帯びた。ダビデは２００人に荷物の見張りを命じ、４００人の部下を連れてナバルのもとを目指して出発した。出発にあたり、ダビデは部下に訓示した。

　「我々は荒れ野で、あの男の物をみな守り、何一つ無くならぬように気を配ったが、それはまったく無益であった。彼は善意に悪意をもって報いた。明日の朝の光が射すまでに、ナバルに属する男を一人でも残しておくなら、神がこのダビデを幾重にも罰してくださるように。」

　ナバルの一味を皆殺しにするという宣告である。ダビデの部下の一人は、近くにいたナバルの手下の牧童に言った。

　「逃げるんだ。ナバルのところにいたら、お前も殺されるぞ。」

　だがその牧童は、ナバルの妻アビガイルのところに向かった。夫はどうしようもない男だったが、妻は聡明で美しかった。従者は駆けに駆けてアビガイルのところに向かうと、いきさつを話した。

　「ダビデ様は御主人に祝福を述べようと荒れ野から使いをよこしたのに、御主人は彼らを罵りました。あの人たちは実に親切で、我々が野に出ていて彼らと供に移動したときも、我々を侮辱したりせず、何かが無くなったこともありません。彼らのもとにいて羊を飼っているときはいつも、彼らが昼も夜も我々の防壁の役をしてくれました。御主人にもこの家の者全体にも災いが降りかかろうとしている今、何をなすべきか、しっかり考えてください。御主人はろくでなしなので、誰もあの方に話しかけることができません。」

　ナバルとは異なり、アビガイルはもちろんダビデのことを知っていた。巨人ゴリアテを討ち取った英雄である。国中で知らない者はない。その英雄に対して、ナバルは侮蔑するかのような対応をしたと聞き、アビガイルは心を痛めた。かつ、ダビデはナバルを討つべく向かってきているという。自分もナバルも討たれて当然のことをしたとはいえ、先の対応の埋め合わせだけはしておかなければならない。アビガイルは召し使いたちに命じ、至急、食べ物などを用意させた。パンを２００個、ぶどう酒を革袋２つ分、羊５匹分の肉料理、炒り麦５セア（３８．５リットル）、干しぶどう１００房、干しいちじく２００個。これらの物を用意するとロバに積ませ、従者に命じた。

　「案内しなさい。後をついて行きます。」

（次回に続く）

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