イスラムの歴史 (2010-8-9)

(2010-8-9)　ダビデ、ナバルに物資を乞う　part 3

（前回からの続き）

　彼女は夫ナバルには何も言わずに、独断でこれらのことをやった。アビガイルがロバに乗って山かげを進んでいくと、向こうから４００人の兵を率いたダビデが進んでくるのが見えた。アビガイルはダビデが近づいてくると、急いでロバを降りてダビデの前に地にひれ伏して礼をした。アビガイルは言った。

　「ご主人様、私が悪うございました。お耳をお貸しください。ご主人様が、あのならず者ナバルのことなど気になさいませんように。はしためは、お遣わしになった使者の方々にお会いしてはいないのです。主は生きておられ、あなたご自身も生きておられます。あなたを引き止め、流血の災いに手を下すことからあなたを守ってくださったのは主です。ここにある物は、はしためが持参した贈り物でございます。お足元に仕える従者にお取らせくださいますように。どうかはしための失礼をお許しください。主は必ずあなたのために確固とした家を興してくださいます。あなたは主の戦いをたたかわれる方で、生涯、悪いことがあなたを襲うことはございませんから。人が逆らって立ち、あなたのお命をねらって追い迫ってきても、お命はあなたの神、主によって命の袋に納められ、敵の命こそ投げ飛ばされることでございましょう。主が約束なさった幸いを全て成就し、あなたをイスラエルの指導者としてお立てになるとき、いわれもなく血を流したり、ご自分の手で復讐なさったことなどが、つまずきや、お心の責めとなりませんように。主があなたをお恵みになるときには、はしためを思い出してください。」

　ささいなことで復讐心に心を燃やし、その手を血に染める必要はない、という意味であった。かつ、アビガイルはナバルの非礼をわびるために、贈り物を持ってきていた。ダビデは感心して言った。

　「イスラエルの神、主はたたえられよ。主は今日、あなたを私に遣わされた。あなたの判断はたたえられ、あなたもたたえられよ。私が流血の罪を犯し、自分の手で復讐することを止めてくれた。主は私を引き止め、あなたを災いから守られた。あなたが急いで私に会いに来ていなければ、明日の朝の光が射す頃には、ナバルに一人の男も残されていなかったであろう。」

　ダビデは彼女の携えてきた贈り物を受け取り、彼女に言った。

　「平和のうちに、帰りなさい。あなたの言葉を確かに聞き入れ、願いを尊重しよう。」

　そうしてダビデは、ナバル襲撃を中止した。

（次回に続く）

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