イスラムの歴史 (2010-4-22)

(2010-4-22)　サウル、ダビデを妬む　part 1

　サウルはさっそくダビデを登用し、外敵との戦いに派遣した。ダビデの活躍はめざましかったので、すぐにサウルはダビデを戦士の長に任命した。ゴリアテを倒した勇士が戦士隊長になり、全ての兵士とサウルの家臣は喜んだ。

　年少ながらもダビデは優れた統率力を示し始め、戦いに出るたびに勝利した。そうしてあるとき、遠征したサウルとダビデが帰ってくると、イスラエルのあらゆる町から女たちが出て来て太鼓を打ち、喜びの声をあげ、三絃琴を奏でて歌い踊りながら王を迎えた。そうして女たちは音楽と共に歌を歌った。その中に次のようなフレーズがあった。

　サウルは千を討ち
　ダビデは万を討った

　これを聞いたサウルは激怒した。この時、サウルのそばにダビデはいない。サウルは歯ぎしりしながら言った。

　「ダビデは万、私は千。あとは、奴に王位を与えるだけなのか。」

　この日以来、サウルはダビデのことを妬みの目で見るようになった。

　預言者サムエルに見放されたこと（(2010- 2-25)　アマレク人との戦い／決別　part 4参照）も原因の１つであろう。自分に自信が無い者ほど他者、とりわけ自分より人気のある者・自分よりも強い者を妬むものである。

　（民心までもが私から離れていくのか）

　サウルにとってそれは恐怖だった。歪んだ感情が、ダビデへの敵対心として噴き出してくるのを抑えきれなかった。自分の家臣までもが、俺と話しているときよりもダビデと話している時の方が楽しそうにしているのではないか？　猜疑心がサウルをむしばんだ。

　悪霊が激しくサウルに下るようになった。ある日、サウルを落ち着かせようとダビデはいつものように竪琴を奏でていた。すると悪霊がサウルに取り憑き、かっとなったサウルは傍らの槍を取り上げて悪魔の形相で槍を振りかざし、ダビデを壁に突き刺すべく力任せに投げつけた。ダビデはとっさに身をかわし、槍はわずかにダビデをそれて壁に突き刺さった。

（次回に続く）

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