イスラムの歴史 (2010-4-19)

(2010-4-19)　ダビデ登用：もう１つの物語

　サウルがダビデを登用されるにいたる、もう１つの物語もまた聖書中に収められている。

　先に紹介したゴリアテと対戦する話の方がおそらくは有名だと思うが、その場面の直前にもう１つのストーリーが描かれているので、これも一応、紹介しておこう。

　預言者サムエルがダビデに聖油を注いだあとの話である。

　神の霊は王サウルを離れたため、神から送り込まれる悪霊がサウルを苦しめるようになった。サウルの家臣はサウルに勧めた。

　「あなたをさいなむのは神からの悪霊でしょう。王様、御前に仕えるこのしもべどもにお命じになり、竪琴を上手に奏でる者を探させてください。神からの悪霊が王様を襲うとき、おそばで彼の奏でる竪琴が王様のご気分を良くするでしょう。」

　サウルは家臣に命じた。

　「私のために竪琴の名手を見つけ出して、連れてきなさい。」

　従者の一人が答えた。

　「私が会ったベツレヘムの人エッサイの息子は、竪琴を巧みに奏でる上に勇敢な戦士で戦術の心得もあり、しかも言葉に分別があって外見も良く、まさに主が共におられる人です。」

　サウルはさっそく使者をエッサイに立てて言わせた。

　「あなたの息子で、羊の番をするダビデを私のもとによこしなさい。」

　エッサイは驚いてパンを積んだロバと、ぶどう酒の入った革袋と子山羊一匹を用意し、息子ダビデに持たせてサウルに送った。

　ダビデはサウルのもとに来て、彼に仕えた。王はダビデのことをたいそう気に入り、王の武器を持つ者に取り立てた。サウルはエッサイに言い送った。

　「ダビデを私に仕えさせるように。彼は、私の心にかなった。」

　それからは、神の霊がサウルを襲うたびに、ダビデがサウルの傍らで竪琴を奏でた。ダビデが竪琴を奏でると、サウルは心が安まって気分が良くなり、悪霊は彼を離れた。

（サムエル記上第１６章第１４節～第２３節より）