イスラムの歴史 (2010-3-29)

(2010-3-29)　ゴリアテ　part 4

（前回からの続き）

　するとダビデは答えて言った。

　「私が今、何をしたというのですか。話をしているだけではありませんか。」

　ダビデは兄から少し離れ、別の兵士にも同じことを聞いた。兵士の答えは、最初に聞いたことと同じであった。すなわち、ゴリアテを討ち取った者には大金が与えられ、王女を妻として与えられ、その父の家には特典が与えられるという。

　「それなら、私が討ち取って見せましょう。」

　ダビデの言葉を聞いたある兵がダビデを見ると、まだ少年に過ぎなかった。そのダビデがあの巨漢ゴリアテを倒すと言っても、彼にはまったく信じられなかった。だがあまりにもダビデの表情が真剣で、かつ自信に満ちていたので、念のため王サウルに伝えた方がいいと思い、とりあえず人づてにサウルに告げた。

　知らせを聞いたサウルは、飛び上がって喜んだ。何しろ、ゴリアテに挑戦しようという声を聞くのは初めてなのである。さっそくサウルはダビデを召し寄せた。

　だが、自分の前に現れたダビデを見て、サウルはがっかりした。どんな精悍な戦士かと思えば、これではまるで少年ではないか。しかもボロボロの羊飼いの服装をしていて、到底、ゴリアテに勝てるようには見えなかった。

　サウルの落胆など知らずにダビデは言った。

　「あの男のことで、誰も気を落としてはなりません。このしもべが行って、あのペリシテ人と戦いましょう。」

　サウルはダビデに答えて言った。

　「お前が出てあのペリシテ人と戦うことなどできはしまい。お前は少年だし、向こうは少年だった頃から戦士として戦ってきた男なのだ。」

（次回に続く）