イスラムの歴史 (2010-2-1)

(2010-2-1)　ヨナタン、命に背く　part 1

　この戦闘の日、サウルは不可解な命令を全軍に下していた。それは「日の落ちる前、私が敵に報復する前に食べ物を口にする者は呪われよ。」というものであった。何かの願掛けだったのかもしれないが、命令であったのでイスラエル側の兵は誰も食べ物を口にすることができなかった。

　ところで、「この地方一帯では、森に入りさえすれば、地面に蜜があった」と聖書にはある。そんな土地があるとは思えないのだが、もしかしたら蜜の入手が容易な土地だったのかもしれない。ともかくも兵士たちはサウルの命令のゆえに、その蜜を口にすることを恐れた。

　ところが、先に渡って敵陣で戦っていたヨナタンは、父のその命令を聞いていなかった。彼は空腹を満たすために蜜を取って食べ、彼の目は輝いた。それを見た兵士の一人が言った。

　「あなたの父上は厳しい誓いを兵士に課して、『今日、食べ物を口にする者は呪われよ』と言われました。そのために兵士は飢え、疲れています。」

　それを聞いたヨナタンは首を振って言った。「信じられない。私の父は過ちを犯している。見るが言い。この蜜をほんの少し味わっただけで私の目は輝いている。もし今日兵士が敵から取った戦利品を自由に食べていたなら、ペリシテ軍の損害は更に大きかっただろうに。」

　その日、イスラエル軍はペリシテ軍をミクマスからアヤロン（位置不詳）に至るまで追撃したので、兵士たちは非常に疲れていた。日が沈むとついには兵士たちは戦利品に飛びかかり、羊、牛、子牛を捕らえて地面で屠り、血を含んだまま食べ始めた。

（次回に続く）