イスラムの歴史 (2010-1-28)

(2010-1-28)　奇襲　part 2

（前回からの続き）

　ヨナタンは両手両足を使って岩をよじ登り、従卒も続いた。「登ってこい」と相手が言うのは、言わば待ちの姿勢である。積極的にこちらを追いかけるつもりが相手にはないことを見て取ったヨナタンは、上手に岩陰を利用して登り切ると、あっという間にそこにいたペリシテ陣の兵士たちを倒し、従卒がとどめを刺した。

　そうしてヨナタンと従卒は次々とおよそ２０人の敵兵を倒した。ヨナタンの強さを目の当たりにして、ペリシテ軍の陣営には動揺が広がった。

　同じ頃。対岸にいたサウルの軍の見張りは、ペリシテ軍の陣で人の群れが動揺し、右往左往しているのに気付いた。報せを受けて、サウルが敵陣を見ると、確かに混乱している。

　「誰かが抜け駆けして、あそこで戦っているのではないでしょうか。」と進言するものがあったので、サウルは兵に命じて、欠けているものがいないか点呼させた。すると、ヨナタンとその部下がいなくなっていることが判明した。

　（あいつならやりかねない。）　我が息子ながら、時に剛胆な行動を取ると常々思っていたサウルは、息子の救援のために攻撃を開始することを考え始めた。

　「神の箱を運んでこい。」

　サウルは例の、モーセが授かった石板を納めた契約の箱を持ってこさせた。その間にも敵陣営の混乱は広がっていた。

　「もういいだろう、攻め上れ！」

　サウルは号令し、全軍に攻撃を命じた。戦場では、敵軍が同士討ちを起こすほどの大混乱に陥っていた。ペリシテ軍に参加していたヘブライ人もまたペリシテ人に反旗を翻し、サウル側に加わってペリシテ人と戦い始めた。また、戦況が有利になったことを伝え聞いて、それまで隠れていたイスラエルの兵もまた戦いに参加し、やがて逃げるペリシテ軍をイスラエル側は追った。

（サムエル記上第１4章第１節～第２３節より）

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