イスラムの歴史 (2008-4-30)

(2008-4-30)　民の不満　part 3

（前回からの続き）

　モーセは神の言葉を民に伝えると同時に、長老の中から適格と思われる者を７０人集め、臨在の幕屋に連れていった。実際には、７０人のうち２人ほどが遅れていたが、モーセが神の前に６８人の長老を連れて行くと、預言状態になって神の言葉を語り始めた。それと同時に、まだ宿営に残っていた２人の長老も預言状態になった。それを見た若い者が、驚いてモーセのもとに走ってそのことを知らせた。

　モーセに心酔していた従者、ヨシュア（ヨシュアについては(2008- 3-24)　アマレクとの戦い　part 1で登場）は、モーセに従って臨在の幕屋の外にいたが、出てきた長老たちが預言状態になっているのを見て、仰天した。彼にとっては預言者はモーセ１人であるべきであって、その他の者が神の言葉を語るなんて、とんでもないことであった。

　ヨシュアはモーセを探し出すと、言った。「モーセ様。どうか彼らが神の言葉を語るのをやめさせてください。」

　すると、モーセは静かに答えた。「お前は、私のためを思って妬む心を起こしているのか。」　そうして続けた。「これでいい。これで、いいのだ。」

　モーセの言葉を解せない様子のヨシュアに視線を合わせることなく、厳しい口調でモーセは続けた。「私はいっそのこと、民全員が預言者になってくれればいいとさえ思っているのだ。そういう日が来ることを願ってやまない。」　そう言って、モーセはヨシュアを置いて自分の宿営に歩き出した。

　それまでヨシュアは、モーセの華やかな面しか見ていなかった。神と対話し、奇跡を起こして民を導くモーセ。だが今、ヨシュアはモーセの暗い面を垣間見てしまった。『民全員が、預言者になってくれることを願っている。』　栄光と裏腹の重圧にあえぐ者の言葉をやっと消化すると、ヨシュアもまた自分の宿営に向けて歩き出した。

　一方、預言状態になった長老たちだが、その状態は一時的なもので、長く続くことはなかった。

（民数記第１１章第１～３０節より）

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