イスラムの歴史 (2008-1-7)

(2008-1-7)　モーセの誕生　part 1

　自分の命令が徹底されなかったことを受けて、ファラオは新たな命令を出した。「ヘブライ人に男の子が生まれたら、一人残らずナイル川に放り込め。女の子は生かしておけ。」

　見つかった男児は、殺された。一方でうまく隠すことに成功した夫婦もあったと思う。そうした状況下で、レビ（(2007-12- 5)　登場人物の整理参照）の子孫のある男が、自分の叔母にあたる人と結婚した。男の名をアムラム。女の名をヨケベドと言った。やがて彼らは子どもを授かった。女の子だった。

　ところが、しばらくして次に授かった子が、男の子だった。ファラオの命令により、この子はこのままでは殺されてしまう。しかし生まれてきた子は可愛かったので、彼らには殺すことなど到底できなかった。女の子と偽って、男の子が生まれた事実を３ヶ月間隠し続けたが、とうとう隠しきれなくなった。

　夫は食欲も無くなるほど思い悩んだ末、ぽつりと妻に言った。

　「仕方がない。川へ、捨てよう。」

　エジプト政府の人間に見つかれば、男児は容赦なく河へ捨てられる。それよりも、籠に入れて流せば、あるいは生き延びるかもしれない。家族はパピルスでつくった籠を用意した。そして妻が娘を連れて、籠の中に男の子を入れてナイル川の岸辺に行った。

　だが、母親には男の子を籠に入れて流すなど、できなかった。しかし、男児は見つかれば殺される　－　母親にできた精一杯のことは、男の子を入れた籠を川辺に置くことだけだった。

（次回に続く）