イスラムの歴史 (2011-2-21)

(2011-2-21)　アヒトフェルとフシャイ　part 1

　そうしたことがあってから落ち着いた頃、アヒトフェルはアブサロムに言った。

　「１２０００人の兵を私に選ばせてください。今夜のうちに出発してダビデを追跡します。疲れて力を失っているところを急襲すれば、彼は恐れ、彼に従っている兵士も全員逃げ出すでしょう。私は王一人を討ち取ります。兵士全員をあなたのもとに連れ戻します。あなたの狙っておられる人のもとに、かつて全ての者が帰ったように。そうすれば、民全体が平和になります。」

　この言葉はアブサロムにも、イスラエルの長老全員の目にも正しいものと映った。

　ただ、ことを急いでつまづきはしないかという不安がアブサロムをかすめた。アブサロムは、もう一人から意見を求めることにした。アブサロムは「アルキ人フシャイも呼べ。彼の言うことも聞いてみよう。」と言い、さっそくフシャイがアブサロムのもとに呼び出された。

　アブサロムは、現れたフシャイに言った。「アヒトフェルはこのようなことを提案した。この提案を実行すべきだろうか。もしそう思わないのなら、意見を話してほしい。」

　実のところ、フシャイはダビデの命を受けてアブサロムのもとに潜伏している（(2011- 2-10)　ダビデとフシャイ／ダビデとツィバ参照）。アヒトフェルの提言を聞かされて、内心では仰天した。今、ダビデを追撃されてはたまらない。表面では冷静を装いながら、必死に考えを巡らせてからアブサロムに言った。

　「今回、アヒトフェルが提案したことは良いこととは思えません。」

　そうして、フシャイは続けて言った。

　「父上とその軍がどれほど勇敢かはご存じのとおりです。その上、彼らは子を奪われた野にいる熊のように気が荒くなっています。父上は戦術に秀でた方ですから、兵と共にはお休みにならず、今頃は洞穴かどこかを見つけて身を隠しておられることでしょう。最初の攻撃に失敗すれば、それを聞いた者は、アブサロムに従う兵士が打ち負かされた、と考え、獅子のような心を持つ戦士であっても弱気になります。父上も彼に従う戦士たちも勇者であることは、全イスラエルがよく知っているからです。」

（次回に続く）

参考地図1-6-21：アブサロムの反乱

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