イスラムの歴史 (2011-1-7)

(2011-1-7)　アムノン、タマルとアブサロム　part 3

（前回からの続き）

　家に帰ってきたタマルに同母兄アブサロムは言った。「兄アムノンがお前と一緒だったのか。妹よ、今は何も言うな。彼はお前の兄だ。このことを心にかけてはいけない。」　タマルは絶望して兄アブサロムの家に身を置いた。

　ダビデ王はことの一部始終を聞き、激しく怒った。だが、長子アムノンに気兼ねしたのだろうか。結局、何も行動を起こさなかった。

　その後もアブサロムはアムノンに対して、良いとも悪いとも一切語らなかった。一族で集まる場があっても、表情には何も出さなかったが、密かに心の奥底でアムノンを憎悪した。

　それから２年が経った。エフライムに接するバアル・ハツォルにアブサロムの羊の毛を刈る者が集まった。アブサロムは父ダビデ王を訪ねて言った。

　「しもべは羊の毛を刈る者を集めました。どうぞ王ご自身、家臣を率いて、しもべと共にお出かけください。」

　王はアブサロムに言った。

　「いや、我が子よ、全員で行くこともあるまい。お前の重荷になってはいけない。」

　アブサロムは懇願したが、ダビデは出かけることを望まず、ただ祝福を与えた。

　するとアブサロムは、穏やかな顔でこう言った。

　「それなら、兄アムノンを私たちと共に行かせてください。」

　ダビデは一瞬、タマルとアムノンの一件を思い出し、不審に思って言った。

　「なぜアムノンを同行させるのか。」

　だがアブサロムは相変わらず穏やかに、ただ家族の親睦を深めたいだけだという趣旨のことを繰り返すばかりだった。そこでダビデは、王子全員をアブサロムに同行させるように言った。他の兄弟も一緒なら、間違いも起きないだろうと考えてのことである。だがダビデは、自分の子アブサロムの心の中を読み誤った。すでにアブサロムは重大な決意を固めていたのである。

（次回に続く）

参考地図1-6-20：アムノン、タマルとアブサロム

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