イスラムの歴史 (2010-11-29)

(2010-11-29)　ダビデとメフィボシェト

　あるとき、ダビデは家臣に言った。

　「サウルの家の者がまだ生き残っているならば、ヨナタンのために、その者に忠実を尽くしたい。」

　ダビデとヨナタンの友情を知る家臣は、ヨナタンの子をまず探した（ダビデとヨナタンとの関係については(2010- 5-13)　ヨナタン、ダビデをかばう　part 1～(2010- 5-24)　ヨナタン、ダビデをかばう　part 4等を参照）。

　やがてダビデの家臣は、サウル家に仕えていたツィバという名の者を探し当て、ダビデの前に連れてきた。

　「お前がツィバか。」と王ダビデが尋ねると、「はい、王のしもべにございます。」と彼は答えた。

　王は言った。「サウル家には、もう誰も残っていないのか。いるなら、その者に神に誓った忠実を尽くしたいのだが。」

　ツィバは王に答えた。「ヨナタン様のご子息が一人おられます。両足の萎えた方でございます。」

　ヨナタンの息子であるならば、とにもかくにも、ヨナタンへの恩返しとして庇護しなければならない。ダビデは聞いた。「彼は、どこにいるのか。」　するとツィバは答えた。「ロ・デバルにあるアミエルの子マキルの家におられます。」　（ロ・デバルはヨシュア記第１３章第２６節のリデボルか？　『新共同訳旧約聖書略解』（木田献一監修、日本キリスト教団出版局、２００１年）p.365参照）

　さっそくダビデは人を遣わし、マキルの家からヨナタンの子を連れてこさせた。名をメフィボシェトと言った。確かに彼は両足が不自由だった。それは、ギルボア山での戦闘で先王サウルとヨナタンが戦死した知らせを聞いて、メフィボシェトを連れて逃げようとした乳母が、慌てていたために彼を落としてしまい、そのためにメフィボシェトは足が不自由になってしまっていたからである（ギルボア山での戦闘については(2010- 9-20)　ギルボア山での戦闘／サウルの最期参照）。

　メフィボシェトはダビデの前に来ると、ひれ伏して礼をした。「メフィボシェトよ。」とダビデが言うと、「あなたのしもべでございます。」と彼は答えた。

　「恐れることはない。あなたの父ヨナタンのために、私はあなたに忠実を尽くそう。祖父サウルの地所は全て返す。また、あなたは常に私の食卓で食事をするように。」とダビデは言った。

　するとメフィボシェトは答えて言った。「このしもべなど一体何になりましょう。死んだ犬も同然の、この私など。」

　メフィボシェトの返事にも構わずにダビデはサウル家の従者ツィバを呼んで言った。「サウルとその家の所有であったものは全てお前の主人の孫であられるメフィボシェトに与えることにした。お前は息子たち、召使いたちとともにその土地を耕して収穫を上げ、お前の主人サウルの孫のために生計を立てるがよい。また、メフィボシェトはいつも私の食卓で食事をすることになる。」

　ツィバは王に答えて言った。「私の主君、王がお命じになりましたことは全て、しもべが間違いなく実行いたします。」

　これ以降、メフィボシェトはダビデの王子の一人であるかのように、ダビデの食卓で食事をすることとなった。ツィバの家に住む者は皆、メフィボシェトの召使いとなり、サウルのものであった土地を耕し、メフィボシェトの家計を支えることとなった。メフィボシェトは足が不自由であったため、毎日のダビデの食卓に連なるためにエルサレムに住んだ。

（サムエル記下第９章より）

参考地図1-6-19：ダビデとメフィボシェト

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