イスラムの歴史 (2010-7-19)

(2010-7-19)　ダビデとサウルの遭遇　～もう１つのストーリー～　part 2

（前回からの続き）

　当初、ダビデがここに来たのは　－　ダビデにとっては一種の懸けであったが、サウルと一対一の話し合いに持ち込むためだった。状況を見て危険なら無理をするつもりは無かったが、可能なことなら話し合いで、これ以上サウルが自分を追い回すことをやめさせたかった。ところが今、自分の目の前には、このような状況が転がっている。ダビデは一瞬のうちに考えを巡らせた。サウルが起きた場合のこと、兵士が起きた場合のこと、話し合いにサウルが応じる可能性、自分たちが生きて脱出する可能性。そうしてダビデは瞬時に決断してアビシャイに言った。

　「サウルを殺してはならない。主が油を注がれた方に手をかければ、罰を受けずには済まない。」

　信じられない、という面持ちでアビシャイはダビデを見た。まさに命がけで潜入しているのである。ここでサウルを殺さなかったら、一体何のためにここに来ているのか。だが、ダビデは続けた。

　「主は生きておられる。主がサウルを打たれるだろう。時が来て死ぬか、戦に出て殺されるかだ。主が油を注がれた方に、私が手をかけることを主は決してお許しにならない。今は、枕元の槍と水差しを取って立ち去ろう。」

　サウルの槍は、サウルの枕元の地面に突き刺さっていた。ぐずぐずはしていられない。ダビデはその槍を引き抜き、サウルの枕元に置いてあった水差しを取ると、不服そうなアビシャイに目線で合図を送ると、そっと二人でサウルの幕営を去った。

　「さぁ、帰るぞ。」

　あとは、誰にも気付かれないようにサウルの陣を去るだけである。二人は気配を殺し、見張りをかいくぐり、サウルの陣地を出ると自分たちの陣に戻った。朝早く、ダビデは配下の者を連れてサウルの陣から離れ、川を隔てて離れた山の頂に立った。

（次回に続く）

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