イスラムの歴史 (2010-7-15)

(2010-7-15)　ダビデとサウルの遭遇　～もう１つのストーリー～　part 1

　今まで書いてきた話と別バージョンの物語も、聖書中には収められている。ここで併せて紹介しておこう。

　ジフ人がギブアに来てサウルに、「砂漠の手前、ハキラの丘にダビデが隠れています。」と告げた。

　狂喜したサウルは、３０００人の手勢を率いてダビデを捜すためにジフの荒れ野に下っていった。サウルはひとまず砂漠の手前、ハキラの丘に陣を敷いた。

　一方のダビデは荒れ野に留まっていたが、サウルが彼を追って荒れ野に来たことを知ると斥候を出して、サウルが来たことを確認した。ダビデはわずかな供だけを連れて、夕方にかけてサウルの陣に接近した。

　遠くからサウルの陣を見ると、ダビデは傍らにいたヘト人（ヒッタイト人）アヒメレクと、ヨアブの弟であるアビシャイに言った。

　「あそこにサウルがいるに違いない。夜陰に乗じて潜入しよう。さて、誰が私と一緒に来るか。」

　３０００人がいる敵の陣地に潜入するのである。かなりの勇気を要した。するとアビシャイが言った。「私が行きましょう。」

　日が暮れた。

　陣地が寝静まった頃を見計らい、ダビデとアビシャイはサウルの陣地に潜り込んだ。息を殺しながら、２つの影はサウルの陣地をさまよい、やがてひときわ目立つ幕営を見つけた。これこそがサウルの幕営に違いない。

　２人は外で、中の様子を窺った。幕営の中に、人の動きは感じられない。皆、寝ているようだった。２人はそっと幕営の中に忍び込んだ。

　幕営の中には、小さな灯りがともされていた。２人は幕営の中を見回した　－　まさにそこに、サウルが寝ているではないか。そのほか、司令官アブネルや、兵士も寝ているようだった（アブネルについては(2010- 4-15)　ゴリアテ　part 9を参照）。

　アビシャイがダビデにささやいた。「神は今日、敵をあなたの手に渡されました。さあ、私に槍の一突きで彼を刺し殺させてください。一度でしとめます。」

（次回に続く）