イスラムの歴史 (2010-7-1)

(2010-7-1)　洞窟における遭遇　part 1

　九死に一生を得たダビデは、自分の部下を率いてエン・ゲディの要害に滞在した。

　一方、ペリシテ人の攻撃を撃退したサウルは、ダビデがエン・ゲディの荒れ野にいるとの報せを受けると、すぐに引き返して３０００人の精鋭を率いてエン・ゲディに向かった。

　そうして、サウルたちはエン・ゲディにある「山羊の岩」と呼ばれる場所の付近に来ると、サウルは用を足すためにとある洞窟に入ったが、そこはまさにダビデの一行が潜伏している場所だった。

　洞窟の中で、最も入り口に近い場所にいたダビデの部下の見張りの兵は、誰かが入ってくるのが聞こえると、息を潜めて暗がりから様子を窺い　－　そして驚いた。なんと、入ってきたのは王サウル本人ではないか。

　急いで、しかし音は立てないように、見張りの兵は奥にいるダビデのところに行って耳打ちした。

　「王サウルが入ってきました。」

　それを聞いたダビデ一行は、緊迫した。ある者はダビデにささやいた。「絶好の機会です。今こそ、サウルを殺すべきです。主がサウルをあなたの手に渡してくださったのです。」

　緊張した表情をしたダビデは、武器を帯びながら静かに立ち上がると、サウルの方に近づいていった。相手にこちらの動きを悟られないように、供はわずかしか連れて行かなかった。

　確かにそこで、サウルが用を足していた。サウルの部下は、洞窟の入り口で待っているのか、サウルの周りには誰もいない　－　サウル一人しかいなかった。ダビデにとって、サウルの命を取るのにこれほど絶好な機会はなかった。

　ダビデの部下は緊張しながらダビデの背後に控えた。さすがに王サウルを、ダビデの部下が殺すわけにはいかない。妙な言い方ではあるが、もしもサウルを殺す資格がある者がいるとすれば、それはダビデだけであるはずだった。ダビデ自身が手を下さなければならないが、ダビデに万が一のことがあっては大変なので、部下たちは万全の準備をしてダビデに合図を送った。サウルが気付いてダビデに向かってきたときには命がけでダビデを守らなければならない。

（次回に続く）

参考地図1-6-9：サウル、ダビデを追う

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