|
|
|
(2010-4-8) ゴリアテ part 7 （前回からの続き） ゴリアテは距離が詰まってくると、身構えてダビデに近づいてきた。ダビデは鎧すら身につけていない。どこからどう見ても、ダビデはただの羊飼いにしか見えなかった。ゴリアテにすれば、とにかく近づいて切るなりたたきつぶすなり、好きなように料理すればいいだけである。 一方のダビデもまた、自分の間合いにゴリアテを入れるために急いで距離を詰めた。ゴリアテは完全にダビデのことをなめ切っていたが、命のやりとりならばダビデも獣相手にさんざん積み重ねてきた。相手がたまたま人間で、自分よりも大きい者だったとしても、ダビデにとっては関係ない。攻撃を外せば自分が死ぬかもしれない境遇は、何度もくぐり抜けてきた。 （いつもどおり、いつもどおり） ダビデは自分に言い聞かせると、待ち受けているかもしれない自分の運命は脇に置き、攻撃に集中する精神状態に入った − すなわち、投石袋から先ほどの石を取り出し、石投げひもに備え付けるとひもを振り回し始めた。一発で当てなければならない。外したら、巨漢ゴリアテに殺される可能性は極めて高い。だがその状況は、獣相手にも何度もくぐり抜けてきたことだった。 ゴリアテの方もまた、自分の半分の身長の少年が石投げひもを振り回し始めているのを見た。 （石投げか） 自分に当たるとは考えなかった。どれほどの確率で当たるというのか。もしダビデが外したら、それはほぼダビデの死を意味する。かわせるかどうかは分からないが、自分は鎧・兜で身を包んでいる。とにかく石を投げさせて、ダビデをたたきつぶせばよい。 盾持ちを置き去りにして、まっしぐらにゴリアテはダビデめがけて走っていった。どんどん距離が詰まっていく。戦いを見守る誰もが、ダビデの無惨な死を予想した。 （次回に続く）
|
|
Copyright(C)2007-2010. Hidenori Tsuchikura. All rights reserved (Except some contents I write "this is other person's or organization's product.")
|
トップページ
目次
前の記事
