イスラムの歴史 (2009-12-14)

(2009-12-14)　サムエル、サウルに油を注ぐ　part 1

　ベニヤミン族に一人の男がいた。名をキシュという。勇敢な男だった。

　彼にはサウルという名の息子がいた。美しい若者で、民の誰よりも背が高かった。

　ある日、キシュのロバが数頭、姿を消した。キシュはサウルに命じた。「若い者を連れて、ロバを探してきてくれ。」

　サウルはエフライムの山地を越え方々を探したが一向にロバは見つからない。ツフというところ（位置不詳）にきたとき、サウルは若者に言った。

　「さあ、もう帰ろう。ロバはともかく、父が我々を心配するといけない。」

　すると若者は答えた。

　「ちょうどこの町に、神の人がおられます。尊敬されている人で、その方のおっしゃることは、何でもそのとおりになります。その方を訪ねてみましょう。おそらく私たちの進むべき道について、何か告げてくださるでしょう。」

　サウルは若者に言った。

　「訪ねるとしても、その人に何を持参できよう。袋にパンはもうないし、神の人に持参する手みやげはない。何か残っているか？」

　若者はサウルに答えて言った。

　「ご覧ください。ここに４分の１シェケル（＝約３グラム）の銀があります。これを神の人に差し上げて、どうしたらよいのか教えていただきましょう。」

　その当時、イスラエルでは神託を求めに行くとき、先見者のところに行った。若者の言う、「神の人」である。この当時、人々は預言者のことを「先見者」とも呼んでいた。

　サウルは若者に言った。「それはいい。さぁ、行こう。」

　彼らは、その「神の人」がいるという町へ向かった。

（次回に続く）