イスラムの歴史 (2009-7-27)

(2009-7-27)　士師サムソン　part 20

（前回からの続き）

　サムソンは、その神殿の中央の、支えとなる２つの柱の間に立った。

　少年の頃、連れてこられて見たことがあるガザのその神殿は、確か中央の頑丈な柱で支えられている建物のはずだった。自分が次にしようとしていることが何を意味するのか正確に知っていた彼は、今一度、神に祈った。

　「私の神なる主よ。私を思い起こしてください。神よ。今一度だけ、私に最後の力を与えてください。ペリシテ人に対して私の２つの目の復讐を一気にさせてください。」

　神殿の屋上には、先ほどのサムソンの見せ物を見るために３０００人の男女が登っていた。

　サムソンは深呼吸すると、２本の柱の間に立って、自分の右手と左手を両側の柱にあてた。

　「俺の命など、ペリシテ人と共に果ててしまえばいい。」

　そう言うと、サムソンは渾身の力を込めて２本の柱を押した。

　人間の力とは思えない力で、サムソンは２本の柱を押し倒した。だがそれは同時に、分厚い天井の岩盤の落下を意味した　－　いかに怪力のサムソンとはいえ、それが落ちてきてはひとたまりもない。押しつぶされて、即死した。だが同時に、サムソンの行動は神殿の崩壊をも引き起こし始めていたのである。

　まず、天井に乗っていたペリシテ人が、天井の崩落と共に死んだ。また、神殿の内部にいた人間も死に、ペリシテ人の領主たちもまた死んだ。

　「彼がその死をもって殺した者は、生きている間に殺した者より多かった。」と聖書には記されている。

　後日。サムソンの兄弟たち、家族の者たちがガザに下った。ペリシテ人の作業に混じり、彼らも苦労しながらも変わり果てた彼の遺体を見つけ、引き取った。そうしてその遺体をツォルアとエシュタオルの間にある父の墓に運び、そこに葬った。

（士師記第１３章～第１６章より）