イスラムの歴史 (2009-7-23)

(2009-7-23)　士師サムソン　part 19

（前回からの続き）

　もっともペリシテ人たちもその可能性をまったく考えていなかったわけではなかっただろうけれども、サムソンはもう目が見えなかった。そういう油断もあったかもしれない。また、サムソンもそのように振る舞った。相変わらず非力で、目が見えず何もできない無害な存在として行動し、つい先ほども物笑いの種になったばかりである。

　一方、サムソンの方では、自分の怪力が戻ってきていることを既に知っていた。知ってはいたが、もう目が見えない。中途半端に少し暴れたところで、いずれは捕らえられて、殺されるに決まっている。だから虎視眈々と、機会を狙っていたのである　－　いつ殺されてもおかしくはないプレッシャーに耐えながら。

　そして彼は、今日こそ、その時が来たと直感した。そうして、何食わぬ顔で柱に寄りかからせてもらったのである。

　自分の覚悟を決めるため、サムソンは一つ呼吸をした。　－　そうして、行動に移った。例の怪力で自分の縛をあっさりと引きちぎると、傍らの兵士を手探りでつかみ　－　次の瞬間、滅多打ちにした。獅子を子山羊のように引き裂くサムソンの怪力である。その兵士はあっという間に撲殺されてしまった。

　もう一人の兵士は、何が起きたか訳がわからなかった。突然、自分の傍らに一匹の猛獣が出現したようなものである。つい先ほどまで一緒にいた同僚が撲殺され、パニックに陥って絶叫すると腰を抜かし、両手で後ずさりするのが精一杯だった。

　その声を頼りに、盲目のサムソンはその兵士に飛びかかった。その足をつかみ、たぐり寄せると、これも滅多打ちにし、持ち上げて床にたたきつけて殺した。

　敵の応援の部隊がかけつけるまで、時間が限られている。息も荒くサムソンは先ほどの柱を必死に手探りで探りあてた。

（次回に続く）

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