イスラムの歴史 (2008-2-11)

(2008-2-11)　過越

　モーセは去る前にファラオに告げた。

　「主はこう言われました。『真夜中、私はエジプトの中を進む。そのとき、エジプトの国中の初子（ういご）は皆、死ぬ。王座に座しているファラオの初子から、石臼をひく女奴隷の初子まで。また、家畜の初子もすべて死ぬ。大いなる叫びがエジプト全土に起こる。そのような叫びはかつてなかったし、再び起こることもない。』　しかし、イスラエルの人々に対しては、犬ですら、人に向かっても家畜に向かってもうなり声を立てません。あなたたちはこれによって、主がエジプトとイスラエルを区別していることを知るでしょう。あなたの家臣は私のもとにくだってきて、我々に出て行くようひれ伏し頼むでしょう。その後、私は出て行きます。」

　ファラオのもとから退出すると、モーセはイスラエルの長老を集めて、言った。「さあ、家族ごとに羊を取り、過越（すぎこし）の犠牲を屠りなさい。鉢にその血を入れ、一束の草をそれに浸し、鴨居と入り口の２本の柱に血を塗りなさい。翌朝まで誰も家から出てはならない。主がエジプト人を撃つために巡るとき、その血をご覧になって、その家を過ぎ越される。柱に塗られた血は、滅ぼす者が家に入ることがないようにするための目印である。」

　その日の真夜中。神はエジプト中を巡り、全ての初子を撃った。ファラオの初子から牢屋につながれている捕虜の初子まで、また家畜の初子まで撃たれたので、エジプト中に大きな叫び声があがった。だが、イスラエルの民の家は、過ぎ越された。

　ファラオは夜中にもかかわらず、モーセとアロンを呼んだ。そして彼らが現れるや否や、吐き捨てるように言った。「さぁ、今すぐエジプトから出て行くのだ、お前たちも、イスラエルの民も。家畜もつれていっても良い、早く出て行け。そしてお前たちの言う主に仕えるがよい。ただ、主に犠牲を捧げる際には、私もまた祝福してほしい。」

　モーセとアロンは宮殿を辞すと、すみやかにイスラエルの民に出発の用意をさせた。時間が無かったので、民は酵母の入っていないパンの練り粉を持って旅立った。神の言葉に従い、モーセはイスラエルの民に対して、エジプトの民に装飾品を求めさせると、エジプト人は金銀の装飾品や衣類を与えた。聖書中の表現を借りれば「主は、この民にエジプト人の好意を得させるようにされたので」これらの品を与えてくれたことになっている。

　こうして、イスラエルの民はエジプトを脱出した。ラメセスを出て、スコトを目指した。その数、「壮年男子だけでおよそ６０万人」と聖書中には記されている。また、モーセはヨセフの骨も携えた。故郷に葬ってほしいというヨセフの遺言による行動である（(2007-12-15)　ヨセフの死参照）。

（出エジプト記第７章第８節～第１０章より）

参考地図1-3-2：ラメセス、ピトム

（(2007-12-28)　男児殺害命令　part 1の地図を再掲）

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