イスラムの歴史 (2008-1-25)

(2008-1-25)　ファラオとの交渉　part 1

　モーセとアロンは、ファラオの宮廷に出かけ、ファラオへの謁見を申し込んだ。モーセはかつて、ファラオの王女に拾われて育った身である。宮廷内にも知る者があった。そのつてを頼った。謁見を許され、ファラオのところに通された。

　かつて王女に育てられた身とはいえ、今は牧畜に生きる者である。ファラオの前に出たモーセの身なりは、エジプトの宮廷の中ではみすぼらしく見えた。モーセとアロンはファラオに恭しく頭をさげた。しかし、それに続く言葉は、ファラオが予想もしないものだった。

　「イスラエルの神、主がこう言われました。『私の民を荒れ野に行かせ、私のための祭を行わせなさい。』と。」

　古代エジプト王国では、ファラオこそが神である。その神である私に向かって、異神を拝むために奴隷を外出させよと言うとは、この者たちは正気なのだろうか？　ファラオは答えた。

　「主とは一体、何者だ。どうしてその言うことを私が聞いて、イスラエルの民を去らせなければならないのか。私は主など知らないし、イスラエルの民を行かせることなど無い。」

　そう答えるのが、当たり前だ　－　冷や汗をかきながら、モーセは思った。いかに神の命令とはいえ、ファラオに向かってこんなことを言うのは正気の沙汰ではない。だが、モーセにとっては神の方が恐ろしかった。神に以前言われたとおり、モーセは続けた。

　「ヘブライ人の神が私たちのところに現れました。どうか、我々が３日の道のりを荒れ野に行き、神に犠牲を捧げることをお許しください。もしそうしなければ、神は疫病かその剣で我々を滅ぼしてしまうでしょう。」

　何なのだ、この者たちは。ファラオは不快になって言った。「モーセとアロンと申したな。お前たちは何故、イスラエルの民を仕事から引き離そうとするのだ。彼らの数はどんどん増えている。なぜそういう者たちの労働をやめさせようとするのか。」

　そうして彼らを退出させてから、役人に命じた。「イスラエル人の奴隷たちがれんがをつくるのに必要なわらを与えるのを止めよ。わらを自分たちで集めさせるのだ。かつ、れんがの生産量は減らしてはならない。彼らは、怠け者なのだ。だから自分たちの神に犠牲をささげに行かせてくれなどと叫ぶのだ。仕事をきつくすれば、偽りの言葉に心を寄せる暇もあるまい。」

（次回に続く）

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