イスラムの歴史 (2020-08-29)

(2020-8-29)　本当にバルディヤ（スメルディス）は偽者だったのか？　part 1

　以上、前回までダレイオスが王になるまでの話を書いた。これは『歴史』に収められているだけでなく、ベヒストゥーンにダレイオスが刻ませた碑文の中にも、同様の話が記載されている。以下、『オリエント世界の発展』p.129から引用する。

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　この伝承は、当事者のダレイオスが刻印させたベヒストゥーン碑文でも、ほぼ同じように述べられている。それによると、カンビュセスには、同父同母のバルディヤという弟がいた。カンビュセスはエジプトに行く前にバルディヤを殺したが、そのことを知る人はいなかった。その後マグ（「祭司」にあたる語。ヘロドトスの「マゴイ」にあたる）のガウマタが叛乱を起こして、自分がバルディヤであると主張した。人々は彼に従い彼は王位についた。カンビュセスはその後死んだ。バルディヤが偽者だと疑いをもった人々も、そう言うことを恐れたが、ダレイオスは仲間たちと起ってバルディヤを殺し、王位に就いた。

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　しかしこれに対して、『オリエント世界の発展』では疑問を投げかけている。

・実の姉妹をだませるほどに似ている人間がいるのか？　いたとしたらそれは、本物ではないのか？

・子どものないカンビュセスが、唯一の実弟を邪魔にする理由がない。

・それほど王位に近いバルディアが殺されて、誰も知らないということがあり得るのか？

・娘もいて、すでに成人していたと思われるのに、バルディア自身に取り巻きがいなかったとは考えられない。（もしバルディアが殺されたのであれば取り巻きが黙っていないだろうし、黙らせるために取り巻きも殺せば、誰にも知られずに・・・などということはあり得ないのではないか）

　と、まぁ、バルディア（『歴史』の中ではスメルディス）の暗殺説への疑問は多々あるのだが、それはまず置いておく。

（次回に続く）

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