イスラムの歴史 (2020-08-15)

(2020-8-15)　偽王スメルディス　part 4

（前回からの続き）

　彼らが王宮に着くと、先にダレイオスが考えていたとおりに事が運んだ。門衛たちはペルシアの要人たちに敬意を払い、かつ、彼らが何かを企んでいるなどとは夢にも思わず一同を通し、尋問する者すら一人もなかった。ついに中庭にまで来ると、王に用件を取り次ぐ役の宦官たちに出会い、その用向きを詰問された。宦官たちは彼らに尋問すると同時に、門衛たちに彼らを通したことを責めた。そうしてさらに奥に進もうとする７人を制止しようとした。７人の男たちは互いに目配せして意を決すると　－　短剣を抜き、宦官たちを刺した。

　ちょうどこのとき、マゴス僧パティゼイテスとスメルディスは中にいて、プレクサスペスの起こした事件への対応策を協議しているところだった。ところが、外が騒がしい。「何事だ」と外を見ると、男たちと宦官が乱闘している。　－　というよりも、宦官たちが殺されつつあった。中には、逃げる者もある。驚いた二人は部屋の中に戻ると、一人は弓を取り、もう一人は槍を取った。そうこうするうちに宦官たちの妨害を排除した７人の男は、部屋の中になだれ込んできた。

　一人のマゴスは槍を振るって防戦し、アスパティネスの腿と、インタプレネスの片方の目を突いた。この戦いでインタプレネスは隻眼となったが、一命を失うにはいたらなかった。もう一人のマゴスは弓で防戦しようとしたが、接近戦で弓は役に立たないと悟ると、隣の部屋に逃れて扉を閉めようとした。ところが、彼が逃げようとするのを見たゴブリュアスとダレイオスは、扉が完全に閉まる前にその部屋に躍り込んだ。こうして、密室の中での戦いが始まった。

　ゴブリュアスがマゴスに飛びかかる。二人はもつれ合って争っていたが、傍らに立つダレイオスは、部屋が暗かったのでどうしようもなく立っていた。ダレイオスが茫然と立っているのを見たゴブリュアスは、なぜ手助けしないのかと聞いた。ダレイオスは「こうも暗くては、間違ってあなたを刺してしまうかもしれない。」と言うと、ゴブリュアスは「何を言っている。今やるしかないのだ。構わぬから、その剣で私もろともこの男を刺せ！」と叫んだ。それでダレイオスも覚悟を決め、どうにかしてマゴスを刺し殺した。幸い、ゴブリュアスは無傷だった。

　彼らはマゴスたちの首をはねると、無傷の５人がその首をひっさげながら城外を目指した。途中会うペルシア人たちには事情を話し、その首を見せたのである。マゴスに欺かれたことを知ったペルシア人たちは、当然に自分たちも同じ事をしてもよいはずと考え、短剣を抜いて歩き回り、見つけ次第、マゴス僧を殺して回った。それ以来、ペルシアはこの日を「マゴス殺しの祭り（マゴポニア）として祝うこととなった。この日はいかなるマゴスも戸外に姿を現してはならないこととされており、マゴス僧たちはこの日は皆、家にこもったという。

（『歴史　上』第3巻第30節、第61～79節（p.299、322～338）より）

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