イスラムの歴史 (2018-1-6)

(2018-1-6)　迷信深き王　part 1

　ちなみにこのエサルハドン、病弱だったようで、占いや儀式に凝ったようである。占星術師、祈とう師などが王に宛てた書簡が残っており、その文章から浮かび上がってくるのは、様々な事象から解釈される予兆におびえ、それを回避するために神経をすり減らす男の姿である。その姿は、古代オリエント世界にその名をとどろかせた帝国の王とはとても思えない。

　『古代オリエントの生活』（三笠宮崇仁編、河出書房新社、1991年）p.128に記載されている、エサルハドンに宛てた祈とう師の手紙を引用しよう。

==============================　引用開始　==============================

「国王陛下に。あたなの僕ナブー＝ナディン＝シュム。

　国王陛下に平安あれ。ナブー神およびマルドゥク神は国王陛下に祝福を与えたまえ。

　すべての禍事まがごとに対する祓いの儀式について、国王陛下は私に御指令下さいました、”明日、執行せよ”と。（畏れながらお答え申し上げます。）その日は「吉」ではございません。私どもは第２５日に準備をととのえ、第２６日に（儀式を）執りおこないたく存じます。しかしながら、この前兆に関しましては、国王陛下は御心配なされませぬように。ベール神およびナブー神はいかなる（凶）兆でも回避させることができますし、国王陛下のために（このたびの前兆も）回避させることでありましょう。なにとぞ国王陛下は御懸念あそばされませぬように」　

==============================　引用終了　==============================

　同様に、同文献のp.129～130より。

==============================　引用開始　==============================

「国王陛下に。あたなの僕ナブー＝ナディン＝シュム。

　国王陛下に平安あれ。ナブー神およびマルドゥク神は国王陛下にこよなき祝福を与えたまえ。

　国王陛下は私に御下問なされました。すなわち”余らが（果たすべき）儀礼について知らせよ”と。祓いの儀式につきましては、つぎのように言われております。すなわち、”７日間、彼（王）は芦の小屋にとどまり、（そのあいだ）彼のために浄めの儀式が執りおこなわれる。（この）儀式は病人に対しておこなわれるものと同じである。７日間、夜の神に捧げる（手を差し伸べておこなう）祈とうと、あらゆる禍事まがごとに対する祓いの儀式とが、ともに執りおこなわれる。７日間、彼は芦の小屋にうずくまり、彼の（個人的な守護）神および女神に頌歌しょうかを誦となえる”と。もしも、陛下が”今、それをなせ”と仰せられるならば、（私は申上げます）第８日が執りおこなうのに <吉> であります」　

（次回に続く）

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