イスラムの歴史 (2010-10-7)

(2010-10-7)　イスラエルとユダの戦い　part 2

（前回からの続き）

　アブネルが振り返ると、アサエルが自分に追いつきつつあるのを認めた。アブネルはアサエルに言った。「お前はアサエルだな。」

　「そうだ。」とアサエルは答えた。

　「周りをよく見ろ。右か左にそれてそこらの若者を捕らえ、身につけているものを奪ったらどうだ。」とアブネルは言った。決して自分の命が惜しくて言っているのではなかった。アブネルはアサエルのことを知っていた。できることなら、戦いたくはない。

　だが、アサエルはまっしぐらにアブネルを目指して走った。アサエルにすれば、ダビデをイスラエルの王とするべく戦っている。そのためにはサウルの子エシュバアルの配下でも群を抜いて戦闘力が高いアブネルは、なんとしても倒しておかなければならなかった。

　なかなか自分を追うことをあきらめないアサエルに、アブネルは重ねて言った。「私を追うことはやめてくれ。お前を地に打ち倒すわけにはいかない。お前の兄、ヨアブに顔向けできないではないか。」

　だがアサエルは頑として離れなかった。やむを得ずアブネルはアサエルを迎え撃つことにした。

　アサエルがアブネルに飛びかかった。とっさにアブネルは槍の穂とは逆の、石突きの方をアサエルの腹に向けて槍を目一杯突いた。アサエルを殺さないための、政治家としての一瞬の判断だったが、同時に戦士の習性として全力で槍を突いてしまい　－　槍は防具の隙間を抜け、アサエルを貫いた。

　うめき声があがった。アブネルの意図とは異なり、槍がアサエルを貫いてしまった。やむなくアブネルはアサエルにとどめを刺した。

　こうしてアサエルは地面に倒れ、その場で死んだ。

（次回に続く）