イスラムの歴史 (2010-5-24)

(2010-5-24)　ヨナタン、ダビデをかばう　part 4

（前回からの続き）

　翌朝。あらかじめ取り決めた時刻に、ヨナタンは若い従者を連れて、ダビデが隠れている野に出かけた。ダビデが隠れている石の近くに来ると、ヨナタンはその従者に言った。

　「これから矢を射るから、お前は走って見つけ出してこい。」

　さっそく従者は駆け出した。すかさずヨナタンは、わざと従者を越えるように、上方にむけて立て続けに三本の矢を放った。矢は、従者を越えてはるか先に落ちていった。

　ヨナタンは叫んだ。「矢はお前のもっと先ではないか。ほら、早くしろ。急げ、立ち止まるな！」

　やがて従者は三本の矢を拾い上げ、ヨナタンのところに戻ってきた。従者は何も知らなかったが、ダビデとヨナタンはその意味を知っていた。遠くから見ていたダビデは、唇をかんで目を閉じた。

　（やはり、王は私を許さなかったか）

　ヨナタンは武器を従者に渡すと、「町に持って帰ってくれ。」と命じ、従者を町に帰した。

　やがて従者も見えなくなると、ダビデは出て来て地にひれ伏し、三度礼をした。彼らは互いに口づけをし、共に泣いた。ヨナタンは言った。

　「安らかに行ってくれ。私とあなたの間にも、私の子孫とあなたの子孫の間にも、主がとこしえにおられる、と主の御名によって誓い合ったのだから。」

　王サウルの殺意が揺るぎない以上、ダビデはもはやここを去るしかない。いつの日か再会することを夢見て、彼らは別れた。

（サムエル記上第２０章より）