イスラムの歴史 (2008-4-21)

(2008-4-21)　金の子牛　part 5

（前回からの続き）

　粛清が終わると、モーセは自分のテントに戻って崩れ落ちるように横たわった。どっと疲れが押し寄せていた　－　何のためにここまで民を導いてきたのか。わざわざ殺すためか？　民は私を非情と言うであろうか？　夜になってもなかなか寝付けないまま、モーセは浅い眠りで一夜を過ごした。

　翌日。モーセは神に語った。「この民は大きな罪を犯し、金の神を造りました。今、もしも彼らの罪をお赦しくださるのであれば・・・。もし、それがかなわないのであれば、どうかこの私をあなたが書き記された書の中から消し去ってください。」

　神が答えて言った。「私に対して罪を犯した者は誰でも、私の書から消し去る。しかし今、私があなたに告げたところにこの民を導いて行きなさい。わたしの裁きの日に、私は彼らをその罪のゆえに罰する。」

　そうして神は続けた。「前の石と同じ石の板を２枚切りなさい。私はその板に再び言葉を書き記そう。今度はあなた一人で山を登りなさい。山のどこにもあなた以外の人の姿があってはならない。」

　今度はモーセ一人で山を登っていくと、神は再び十戒を授けた。

　ところが聖書のこの部分、先の十戒はＰ文書版だが今回の十戒はＪ文書版になるのである。内容は以下のとおり。

１．あなたは除酵祭を守りなさい。７日の間、アビブの月の定めの日に、私が命じた酵母を入れないパンを食べなさい。アビブの月に、あなたはエジプトを出たからである。（(2008- 2-11)　過越参照。なお、「アビブの月の定めの日」とは春分後の最初の満月の日）

２．何も持たずにわたしの前に出てはならない。

３．あなたは６日の間働き、７日目には仕事をやめねばならない。耕作の時にも、収穫の時にも、仕事をやめねばならない。

４．あなたは、小麦の収穫の初穂の時に、七週祭を祝いなさい。

５．年の終わりに、取り入れの祭りを祝いなさい。

６．年に三度、男子はすべて、主なるイスラエルの神、主の御前に出ねばならない。

７．あなたは、わたしにささげるいけにえの血を、酵母を入れたパンと共にささげてはならない。

８．過越祭のいけにえは翌朝まで残しておいてはならない。

９．あなたは、土地の最上の初物をあなたの神、主の宮に携えてこなければならない。

１０．あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない。

　・・・ということで、Ｐ文書版の十戒とは異なり、祭儀的十戒と呼ばれる。

　なお、この部分、出エジプト記の第３４章第１０～２８節にあるが、実際にはもっと細かくて１１以上ある。第２３章第１４～１９節や『新共同訳旧約聖書略解』（木田献一監修、日本キリスト教団出版局、２００１年）p.130およびp.120を参考にした。

　（金の子牛の物語は、出エジプト記第３２章より）

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