|
(2007-9-14) ヤコブ （帰郷編） part 1 （登場人物については(2007- 8-29) 登場人物の整理を参照してください） いよいよ、ヤコブ一行がカナンに入る日が近づいていた。 しかし、それは同時に、兄エサウとの再会も意味していた。まだヤコブが若かった頃 − 父の祝福を奪ったヤコブに、兄エサウは殺意すら抱いた。あれから何十年も経った。兄は、まだ私を殺したいほどに憎んでいるだろうか？ 独身だった若かりし頃ならともかく、今は二人の妻とその子ども、さらにそれぞれの妻の側女とその子どもも連れていた。いざこざは、極力避けたい。 自分の故郷が近づくに連れ、ヤコブは慎重になった。自分のしもべの一部を先発させて、故郷ヘブロンのあたりを探らせた。兄エサウは、今、何をしているのか。探らせている間、一所に留まってしもべの報告を待った。やがて、ヘブロンでの情報をしもべが持ち帰った。 「ご主人の兄上エサウ様は、ヘブロンの南方、セイル地方に移り住んでいるようです。」 ヘブロンからセイル地方は、せいぜい150kmくらい。お互いに行き来しようと思えば、すぐにできる距離である。やはり、兄に挨拶しないわけにはゆくまい。無視を決め込んでカナン地方に落ち着いたところで、兄の感情をますます害するばかりだ。そう思い、ヤコブは兄のもとに使いの者を遣わすことにした。 ヤコブはしもべの中の数人を呼んで、言った。 「よいか、お前たちはこれから南のセイル山地を目指し、私の兄のところに行って、こう伝えなさい。『あなたのしもべヤコブは、ラバンのもとに滞在して今日に至りましたが、牛、ろば、羊、男女の奴隷を所有するようになりました。そこで使いの者をご主人様のもとに送り、ご機嫌をお伺いするものであります。』 お前たちが戻ってくるまでは、我々はこの辺りに留まる。すぐに出発せよ」 選ばれたしもべの者たちは食糧と水を携え、ラクダに乗って南方を目指し、行く先々で情報を集めながらヤコブの兄、エサウのところを目指していった。 （次回に続く） 参考地図1-2-5：古代中近東
|
